内容説明
弾圧の時代をユーモアと文才で生き抜く男達。百年前の大逆事件後、編集プロダクションと翻訳会社を兼ねた活動家の拠点を創ったのが堺利彦。幸徳秋水、大杉栄との交流など新しい視点から明治の社会主義を描く。第62回読売文学賞[評論・伝記賞]受賞。講談社創業100周年記念出版。
目次
一九一〇年、絶望のなかに活路を求めて
文士・堺枯川
日露戦争と非戦論
“理想郷”としての平民社
「冬の時代」前夜
大逆事件
売文社創業
『へちまの花』
多彩な出版活動
高畠素之との対立から解散へ
一九二三年、そして一九三三年の死
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
23
社会主義者堺利彦の評伝。彼がつくった日本初の編集プロダクション『売文社』のことを中心に、彼とその周辺の人物たちに焦点をあてた労作。彼は親友の幸徳秋水と大杉栄のような悲劇的な死を迎えなかったためか彼らほど有名ではない。人を喰った名前の売文社は、当時の社会主義者たちの『冬の時代』に、同志たちがなんとか生活するためになんでもござれの文章書きを請け負っていた。ユーモアあふれる堺の人格やと当時の世情と人間群像がよく分かる。 この著者はこの作品の執筆途中で病気がわかり、この作品が遺作になったしまったようだ。文庫有り。2014/03/19
ステビア
21
初期社会主義者の伝記。柔軟でしなやかな知性をもった人物だったようだ。2022/08/06
とみやん📖
15
緻密な取材と圧倒的な情報量で、売文社と堺利彦に迫った本。 日本の社会主義者の源流にある人物だが、恥ずかしながらほとんど知識がなかった。当局の締め付けが厳しい中、生活の糧として、翻訳や代筆、出版などを手がけ、多くの同士を養ったバイタリティに感服せざるを得ない。ただし、この時代にもし自分が生きていたら、反社会的勢力とみなして、関わりを避けていただろう。 堺利彦の文才とユーモアに関心が高まったので、作品をいつか読んでみたい。「へちまの花」が特に気になった。2018/03/31
ばんだねいっぺい
11
ペンをもって、パンを得て、得たパンを同士に分け与えた堺氏は、偉大。2015/09/16
勝浩1958
9
なんという強靭な精神力としたたかさ、そしてどんな苦境にあってもユーモアを忘れない懐の深さか! これまであまり語られることのなかった『売文社』での堺利彦の奮闘ぶりが今に甦る。2011/03/10