内容説明
高崎で気ままな大学生活を送るヒデは、勝気な年上女性・額子に夢中だ。だが突然、結婚を決意した彼女に捨てられてしまう。何とか大学を卒業し就職するが、ヒデはいつしかアルコール依存症になり、周囲から孤立。一方、額子も不慮の事故で大怪我を負い、離婚を経験する。全てを喪失し絶望の果て、男女は再会する。長い歳月を経て、ようやく二人にも静謐な時間が流れはじめる。傑作恋愛長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
320
絲山秋子の作品は6冊目になるが、多彩な世界を描く多才な作家という印象だ。主人公のヒデは、これという原因や理由も見いだせないままに(しいていえば、額子に捨てられたのが原因か)、泥沼のようなアルコール依存症に陥っていく。小説が東京を舞台に描かれていたならば、彼は立ち直れないままだっただろう。ところが、まだ濃密に地縁や血縁の生きる高崎であったことが彼を救っている。しかも、そこにさえ居づらくなった先には片品という、さらなるアジールが用意されていた。ただ、分らないのは、この小説が「想像上の人物」を必要としたことだ。2014/02/08
chimako
127
主人公ヒデは芯からばかものだった。年上の女 額子に溺れ、捨てられたときは下半身丸出しで木に縛られると言う体たらく。次には酒に溺れ、付き合っていた可愛い女性を殴る蹴る。飲んだ後の事は忘れてしまい、自分がどれだけ人を傷つけたかさえも全く知らない。これ以上のばかものがあろうか!特にアル中(あえてこのことばを使う)になってからのヒデは救いようがない。ばかの骨頂であった。やがて時は過ぎ、額子は腕を失い、ヒデは何とか酒を断つ。たった一人の異姓の友だちネユキは逮捕される。最後の「ばかもの」はあたたかい。お幸せに。2017/05/10
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
95
年上の女性と過ごす生活に淫していた男は、突然「結婚するから」と宣言した彼女に最悪な形でフラれた。就職し、別の女性と暮らすようになるも酒に溺れ、全てを失ってしまう。どん底から抜け出そうともがくうち、かつての彼女が不慮の事故で大怪我を負い、離婚して独りで暮らしていることを知る……。絲山秋子さんが描く物語は大きく【働く女性】もの(芥川賞受賞の『沖で待つ』など)と【転落し破綻した人々】ものに分類できると思うけど、これは【転落・破綻もの】の代表作。不器用で愚かで、それでも生きていく。でもやっぱり、独りでは辛いね。2015/03/06
ベイマックス
90
何だかな…、いいんだけどさ。有名人でも芸能人でもないからさ、日々の日常を本当にただ淡々と生活している身にとって、好き勝手やって病気からも生還して女の元に戻れて、はぁ~ぁ(笑)。まっ、物語としては面白かった。額子、かっこいいしね。翔子は可哀相だな、いい子なだけに。2020/11/06
里季
81
確かにばかだよ。ヒデはほんとにばかものだよ。回りの人に助けられながら生きてるのにアルコール依存症になんかなっちまって。額子もまたばかだよ。そりゃ振ったときはひどいやつと思ったけど、なんだか涙が出てきちまうじゃないか。左腕をなくした額子を風呂で洗ってやるヒデ。二人とも暖かいじゃないか。泣けるほどばかものだよ。2017/05/28
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