内容説明
ゲーテ自身の絶望的な恋の体験を作品化した書簡体小説で、ウェルテルの名が、恋する純情多感な青年の代名詞となっている古典的名作である。許婚者のいる美貌の女性ロッテを恋したウェルテルは、遂げられぬ恋であることを知って苦悩の果てに自殺する……。多くの人々が通過する青春の危機を心理的に深く追究し、人間の生き方そのものを描いた点で時代の制約をこえる普遍性をもつ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
614
最初に読んだのは中学生の時。その時は中学生並の恋はしていたものの、それは当然このような命を懸けたというものではなかった。そして、今回再読。今度はもはや恋に命を書ける情熱をなくしていた。かくして、私はこの小説に強い共感を持って没入する時期を失っていた。その代わりに客観的に眺められるのかも知れないが。まず、本書の最大の特徴である書簡体形式について。これは大いに成功している。なにしろ恋はけっして客観的なものではありえず、偏に主観的なものだから。情熱のままに突き進むヴェルテルを描きつつも、ゲーテは冷静だ。⇒2016/01/09
こーた
282
うわあ、ウェルテル、何て不器用なやつなんだ。自らの置かれた状況への不満を、不平を、懊悩を、一方的に捲くしたてる。恋のこと、仕事のこと、自分のこと。若者は怒り、舞い上がり、傷つき、悲しみにくれる。つまり、悩んでいる。め、面倒くさいやつ!まるで若いころの自分を見てるみたいだぞ。はたからみたら取るに足らない悩みでも、当の本人はいたって真剣。その滑稽さに笑いながら、次第に深刻さを帯びていくさまが、何ともつらい。そんなに思い詰めなくても、ておもうけど、若者の悩みはいつだってそういうものなのかもしれないな。⇒2020/05/11
ハッシー
269
【死に至る恋愛】▶︎ピースの又吉さんがノブコブの吉村さんに勧め「全然分からない」とにべもなく言われた作品。▶︎確かに難しく、主人公ウェルテルの文章は支離滅裂で情緒不安定だ。▶︎身が焼けるほどの盲目的な恋を経験すれば、もう少し理解できるのだろうが、それをするには僕はいささか年をとりすぎてしまった。2016/09/23
ehirano1
223
実は再読。名言に呻る一方、詩は相変わらずさっぱりでした(泣)。総じて本作は著者の実体験ではないかと思ったらなんとそのとおりだったのには驚愕しました。本作の顛末は言わずと知れたはウェルテルの自殺で閉じるのですが、著者自身がそうならなかったのは、本作を作り上げることで(=創作による消火?昇華?)ウェルテルと同じ道を辿ることを逃れることができたのではないかと思いました。2023/06/24
ヴェルナーの日記
215
物語は主人公ウェルテルが、ウィルヘルムという親友へ宛てた書簡という構成になっている。そこで不思議なのが、このウィルヘルムという人物とは何者なのか?ということである。書簡の内容はロッテに対するウェルテルの想いを、赤裸々に書いている、ということはとても親しい間柄ということになる。想像を膨らませると、2人の関係は、名前が似ていることから双子の兄弟なのか?とも思えてしまう。だが、自分が思うにウィルヘルムは、ウェルテル自身が創り出したもう1人と自分ではないだろうか。2014/02/16