内容説明
いくらお金を稼いで貯めても生きる喜びにつながらなければ意味はない。潤沢なお金がなくても、日々をいかに楽しく暮らすのか。それが「貧楽暮らし」。著者の三人の子どもたちは自立へと旅立ち、四半世紀続けた地域誌『谷中・根津・千駄木』は終巻を迎えた。変わらずあるのは生まれ育った東京の古い寺町の四季と仲間たち。著者自らのターニングポイントをみつめたエッセイ集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ユズル
15
物語と思ったらエッセイでした。谷根千、良いですねえ。谷中は猫の町、というのはテレビや情報誌で知っていたし行ってみたいと思っていたけれど、それにかこつけて捨てる人間も居るんですね。捨てるなら飼うな(怒) 筆者の家族の話も良かったけれど、一番印象に残った章は『恥ずかしいという感覚』。その感覚を持たない人間、多くなってますよね。かくいう私も忘れがち。頭の隅に必ず入れておこうと思います。2017/03/31
やまりん
12
「三匹のおっさん再び」と偶然続けて読んだ。地域に根差して生きることの大切さがよくわかる。ただ、遠くへ通勤している人は地域のことにかかわるのが、なかなか大変だ。負担になりすぎないよう、それぞれが得意なことをして地域を活性化していけたらいいな。『谷根千』を立ち上げた3人のように。 2013/04/25
きんぎょっち
6
人間を育てるのは「恥」の感覚ではないだろうか。「勝ち組」と称してわが世を謳歌している人々には恥の感覚がない。私はいつなんどきでも、負ける側に立っていたい。という著者。軽いエッセーだが、著者の信念や鋭い洞察が随所に散りばめられていて、私は自分の中学時代を思い出した。たわいない遊びで「次に生まれ変わるのは、男・女、どちらがいいか」という問いに、昭和の末期で男尊女卑の風潮が残っていたせいか、女友達はみな男を選択した。自分は女を選んだ。差別する側よりされる側で差別と闘いたい、と。あの頃の自分の矜持をふと思った。2016/12/22
葉芹
4
「恥」が人間を成長させる。 名言。2011/08/06
あきこ
3
「貧楽」とはなんていい言葉なんだろうと思う。心の置き場としてふさわしい。しかし気楽そうな文章でありながら、中身は物事を深くとらえ、社会への警鐘は鋭い。とても聡明な人だな、子供を育てながら大変だったろうな、その両立は素晴らしいな、と思っていたら巻末のお嬢さんの解説で爆笑。やっぱりそうだよね。森さんはお母さんというよりお父さん的。人間のできることって限界あるよと思ってさらに親近感を持てた。2013/11/18