内容説明
本書は、カール・ヒルティの著書『心の病を癒す生活術』(原題『Kranke Seelen』<病める心>)の全訳である。彼の著作で特に有名なのは、岩波文庫などで刊行されている『幸福論』『眠られぬ夜のために』が筆頭にあげられる。本書はこれらの大作とくらべればいかにも小品であり、しかも取り扱っている領域は人生全般ではなく、“不安定な人間の精神生活をいかに改善し、向上させるか”に限られている。しかしこの穏やかな、論理的な筆致からしても、たしかにキリスト教的色彩は濃いけれども、洋の東西を問わず、また老若男女の別なく、とりわけ変転の時代を生きる日本の読者に多くの感銘を与える書物であると信じている。「訳者まえがき」より抜粋
目次
病める心―治癒への可能性
信仰と治療―神との決別が心の病を招く
唯物論者の迷妄―厭世主義の悲劇
神経症と文明―疲れ果てた文明人
恐怖感の追放―治癒への出発点
最善の手段―自然で規則的な睡眠
有益な仕事―無為は神経を衰弱させる
退屈と衰弱―人生の喜びをもつこと
健康の伝染―神からの贈り物を望み、かつ拝受せよ
身体の保護―肉体の奴隷にならない
生活の処方―魂の喜悦と平穏を得よ
悪しき風潮―ひたすら回避しなければならない事柄
真理の精神―魂の興奮に依存してはならない
神の秩序―喜びに満ちた生命を求めよ
真の信仰―情熱からのみ「力」が生まれる
思想のなかの罪―心の衰退をもたらすもの