内容説明
丘の上の家に移り住んで幾十年が経ち、“禿山”だった庭には木々や草花が育ち、鳥達が訪れる。巣立った子供や身近な人々の間を手作りや到来の品が行き交い、礼状に温かく心が通い合う。「野菜が好き」と語り出す食べ物の話、父母や師友への追懐、自作の周辺等、繰り返しとみえてその実同じではあり得ない日常を、細やかな観察眼と掌で撫でさする慈しみを以て描き静かな感動を誘う随筆43篇に、中篇「私の履歴書」を併録。
目次
1(梅の実とり 野菜讃歌 ほか)
2(お祝いの絨毯の話―『ピアノの音』 宝塚・井伏さんの思い出―『散歩道から』 ほか)
3(小沼とのつきあい フランスの土産話―遠藤周作を偲ぶ ほか)
4(私の履歴書)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まなみ
4
いろんなところで書いたものを一つの本に収めてくれるのはすごく嬉しい。年譜や著者目録も嬉しかった。食べ物の描き方が美味しそうでした。私の履歴書、よかったです。2010/01/26
7kichi
2
「かきまぜ」今度作ってみようかな。2010/01/12
no.ma
0
随筆もやはりいい。お馴染のエピソードが何度も繰り返されるので、自分の家族の話だったように錯覚する。「ありがとう。これはうれしかった。おいしかった。どれもみないい。……」いつもの言葉でつつんでくれて、温かい気持ちになる。庄野潤三は、昨年9月老衰で八十八歳の生涯を終えた。解説に、「きっと本人は、自分が死んだことを気づいていないに違いない。」と夫人がおっしゃっるような、眠るような大往生であったようだとある。……寂しい気持ちでいっぱいになる。心温まる多くの作品を残していただいた、どれもみないい、ありがとう。2010/02/11
bunca
0
同じエピソードの文章が何度も登場するのが、自分のじいさんの話を聞いているような感覚になってきてだんだん近い人のような親しみがわいてきます。遠藤周作氏を呼び捨てで書いてあるのに重鎮さ具合を再認識させられました。2010/07/10
utataneneko
0
庄野さんの文章を読んでいると、家族っていいな、などと、なんのてらいもなく思える気がする。人間へ対しての温かい信頼感が感じられる。2010/05/23