内容説明
深刻な格差社会の拡大。低所得と病気を関連づける疫学データは多い。だが、それだけではない。社会福祉の専門家で医師の著者は、格差社会の拡大は病院に満足にかかれない低所得層を産むだけでなく、富裕層の「勝ち組」をも不健康にして社会全体の地盤沈下を招いていることを解明。健康格差に対抗し、隣人・友人とのネットワーク作りなど、社会と個人の「心とからだ」の健康を守る処方箋を提案する。
目次
第1部 「健康格差社会」の現実(「健康格差社会」日本;なぜ「健康格差」を問題にするのか)
第2部 「健康格差社会」発生のメカニズム(「見かけ上の関係」か?;なぜ健康格差は生まれるのか;社会疫学とは何か;格差拡大は国民を不健康にする)
第3部 「健康格差社会」を生き抜くために(「健康格差社会」を生き抜く;一人の力で生き抜けるか;健康によい社会を考える;本書で伝えたかったこと―「well?beingな社会」を目指して)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シュラフ
22
「健康格差が大きい社会とは、社会経済的格差も大きく、人々の心理社会的なストレスも大きく、ソーシャル・キャピタルも損壊された、いわば病んだ社会である」。健康問題について個人の自己責任のみに押しつけるのではなく、社会経済的要因による健康への影響もある。格差が大きくなれば、分断を生み、社会が不安定化する。だからこそ健康格差是正に取り組むべき社会保障政策が重要である、というのが著者の主張。新型コロナのダメージがいよいよ深刻化しようとする今日において、経済的弱者の救済をいかにすべきかについて示唆を与える一冊である。2020/09/06
Tatsuya9
9
単にスポーツや食生活が良ければ健康になれるっていう訳ではなく、その裏のもっと大きな部分で捉えていかないといけないことを学んだ。 安定した収入を得ることが健康への近道なのか。2019/05/07
Humbaba
8
格差を完全になくすことなど不可能だし、無理矢理にそれを押し進めても何の意味もない。しかし、それは格差を完全に肯定してそのままにすべきということでもない。人は平等であるべきだが、生まれた時から完全な平等が実現されているわけではない。それを非難しても無意味であり、その不平等に起因する格差は縮小されるべきといえる。2016/05/01
Humbaba
5
高所得者ほど健康的にも問題がない.無論それには健康だからこそお金を稼げるということも影響しているだろう.しかし,その影響だけでは証明出来ないほどに差がある.その上,勝ち組であっても不健康になるという,不幸な方向に進んでしまっている.2013/02/20
オランジーナ@
4
ある程度の格差は致し方ない部分はあるが、健康だけは平等であってほしいとは思っていたが、やはり格差社会は健康にも及んできている。健康格差社会を生き抜くには、認知をポジティブにすることが大事。2015/12/13