内容説明
信玄亡きあと屈指の大国を受け継いだ武田勝頼は、内憂外患を抱えていた。近隣諸国からの脅威に加え、財政逼迫や家臣との対立も勝頼の孤立を深めてゆく。こうした状況のもと、同盟国・北条家から嫁いだ桂姫は、勝頼の苦悩に触れて武田・北条両家の絆たらんとするが……。信玄をも上回る武人の才に恵まれながら悲劇の主人公となった勝頼の後半生を、歴史小説界に現れた破格の才能が活写する本格歴史長編。
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感想・レビュー
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yoshida
174
長篠合戦での敗北から武田家の滅亡迄を描く。とても良く調べて書かれている印象。津本陽氏の「武田信玄」で、長坂釣閑や跡部大炊助らの佞臣により武田勝頼が政策や判断を誤るのは知っていた。本作では甲相同盟の証として勝頼に嫁いだ桂姫の視線が加わり、北条家との関係も色濃く描かれれている。果たして勝頼が生き残る途はあったのか。太郎義信の謀反により急遽、武田の後継者となった勝頼。偉大な父である信玄からの権限委譲や権威付けの時間が不足。金の産出量の枯渇による財政難。腹心の部下が佞臣。偉大すぎる父を持った、勝頼の哀しみを見た。2017/02/12
岡本
133
北条夫人が武田家に嫁いでから滅亡までをじっくり描いた一冊。滅亡する事を知った上で様々な思惑渦巻く武田家の話を読み進めるのは結構悲しいものがある。近年は再評価も進んで「勝頼=武田家を潰した無能」という感じは薄れてきた気がする。最大版図を築いたとはいえ父親に比べて色々と恵まれてなかったんだなーと思う。2017/11/03
とん大西
119
凄い圧です。伊東さんは好きな作家さんで何作か読んでますが、本作は抜群の名作だと思います。-武田勝頼。カリスマ信玄の後継者。偉大な父を超えれなかった悲劇の武将、名門武田家を破滅に導いた愚かな武将-英雄達の狭間に埋もれて負のイメージが先行してしまいます。武田家の威勢よ再び-巻返しを図り外敵との攻防に心血を注ぐも止まらない家内統制の乱れ。桂姫との切ない夫婦の日々。生き恥をさらすのか、再興を目指すのか。無念の死か誇り高き最期か。愛情、哀情、慕情、憎悪、大義…滅びの美学という一言では収まらない深い余韻を残します。2019/07/15
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
69
良かったです! 久しぶりに大作を読みきったという充実感に満たされた感じです。長篠の戦い後、武田と同盟関係にあった北条家より桂姫を迎え入れるところから物語は始まります。信玄亡きあとの大国を引き継いだ勝頼のとまどいと苦難が痛々しいくらいに伝わってきます。頂点に立つ者の孤独とか裏切り、そして友情。滅亡へと向かって廃れ行く過程は悲しすぎます。この作品で描かれている物静かな勝頼のイメージとも相まって、戦国の世の非情を感じずにはいられない、伊東作品としてはちょっとウエット感のある作品だったと思います><2016/08/28
k5
56
長篠の戦いのあと、宿老たちがほぼ死んで、長坂釣閑斎をはじめとする官僚たちが主導する武田家が滅びるまでのお話。イマイチキャラが立ってなくて入りこみにくかったかもです。2022/06/22