内容説明
南木野淳は、金欲しさに盗みに入り犯罪の目撃者となった男女を殺害した。刑務所の中で多くの書籍、思想に出会った淳は「新エロイーズ」読書を機に愛についての思考を重ねる。自分の犯行の愚かさを知り、深く罪を自覚した彼は、罪を償うため控訴も取りやめ、死刑が確定する。淳は、教会ボランティアの榊原茜に恋い焦がれるが、茜は被害者男性の婚約者だった……。刑務所のなかの奇蹟のような愛を描く慟哭の純愛小説。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たんかともま
2
前置きなどほとんどなく、罪を犯したあとから始まるため罪人の感情を覗きみたいという欲で読ませる。また、小嵐九八郎の小説に出てくる罪人は決まって聖書と歎異抄に関心を寄せる。その二つが罪というものに寄り添っているのだろう。そして性についての生々しさもあり、死体でオナニーをしたことをある種、殺人以上に悔いているのは妙にリアル。宣伝文句では究極の純愛などと書かれているが、核はそこではないような気がした。むしろどんな状況下、関係であっても性を持ち続け、汚れ、だからこそ綺麗でありたいと思う人間を描きたかったように思う。2020/09/27
ねむ
1
死刑囚と殺害された男の恋人の純愛物語とあらすじには載っているが、はたして、これを純愛小説という括りにしてしまってもよいのだろうか、直観的にそう感じました。確かに、物語の後半になるにしたがって恋愛の要素が非常に濃くなり、それは性愛にまで及びますが、物語の根底に横たわるのは、殺人、罪、芸術への熱情、そして何より生に対する本能的な渇望です。純愛という枠にまとめてしまうには、あまりに読者に与える読後感が重い。 読み物としても、エンタメ小説なのか、はたまた純文学なのか、判断しづらい微妙な位置にあります。2012/07/20
tiffany
1
一人ぐらい、幸せになる人がいてほしかったな。2012/04/28
おそのさん
1
ひたすらに悔い、自分の所業におののき、その時を待つ死刑囚。 神にすがらずただ存在を確信し、油性ボールペンで粗末な便箋に絵を描き続ける。これは大変に名作だと思うのだが、読み方によって評価が分かれそうだ。恋愛小説では断じてない。2011/12/01
デンティスト
1
獄中の死刑囚とその死刑囚に婚約者となる人を殺された女性との交流、恋愛を書いた小説。不思議な小説でした。作家が5年程収監されていた経験のある人だと知って、すこし分かった様な気もしました。2010/09/08