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内容説明
2008年ノーベル物理学賞は日本人3人、南部陽一郎、小林誠、益川敏英の独占であった。ノーベル賞委員会によるその贈賞理由を見ると、「破られた対称性」だという。これがキーワードである。いったい何が破れたのか。宇宙の究極の物質である素粒子やクォークに関わることと一般に誤解されているが、じつはミクロの素粒子からマクロの宇宙にまで通ずる自然観の衝撃である。では、いかなる自然観を確立したのだろうか。「破られた対称性」といっても、南部陽一郎のアイディアと、小林・益川理論では意味が違う。3人をよく知る理論物理学者である著者は、こうした自然観の衝撃の意味をくわしく見ていく。さらに、彼らの考えが登場する前後の「創造の瞬間」に立ち戻り、湯川秀樹、朝永振一郎、坂田昌一らの日本の素粒子物理の伝統の中に正しく位置づけし、その歴史的意味を跡づける。
目次
序章 国民的慶祝
第1章 破られた対称性―二〇〇八年ノーベル物理学賞のキーワード
第2章 素粒子場の量子力学
第3章 対称性とその破れ
第4章 素粒子論のメタ
第5章 素粒子物理の群像―ともに歩んで
第6章 宇宙と素粒子―私の遍歴
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おおにし
15
編集が悪く最初から読み進めると素粒子の量子力学の解説で挫折してしまう。対称性の破れとは何かを知りたければ、1,2章はとばして3,4章を読めばよい。5章の湯川・朝永に始まる京大素粒子物理の歴史も興味深かった。2021/03/13
shinano
11
正直、タイトルと著者でつられた感なのだが、日本人物理学者3名の2008年ノーベル賞受賞論文が対称性に関するもので、この論文の簡単な説明と「破れ」とはの、対称性についての内容であった。日本の素粒子物理の歩み、巨人湯川・朝永らからの日本基礎物理学・理論物理・実験物理の、世界の中の位置や、その物理学界の流れの中での、南部・益川・小林の研究とノーベル賞受賞での効果についての内容が占めていた。良かったのは物理学者の研究姿勢やその思想観を哲学的な観点で説明している部分でもあった。そこにはマルクス論が顔をだす。2011/11/30
gonta19
7
2009/11/12 ジュンク堂三宮駅前店にて購入 2010/6/24~6/28 久しぶりに物理学の本を読んだ。軽いエッセイかと思ったらなかなかヘビーな内容で良く理解できないところも多々あった。 佐藤先生は私が高校生の頃憧れだった先生。佐藤研に入って師事する予定であったが、途中で方針変更してしまったのだった。まあ、正解だったんだろう。こんな内容を自分ができたとは思えない。2010/06/28
masmt
6
世界をリードしてきた日本の素粒子物理の進展を真っ只中で見てきた著者による素粒子物理学史の簡単な紹介。対称性の破れについて易しく、しかし本質を外さずに解説されてる。その理論構築の背後にマルクスなどの思想の影響が強くあったことに驚いた。物理学志望者は必読。2009/12/04
bittersweet symphony
1
佐藤文隆(1938-)さんは宇宙論・相対性理論がメインフィールドの理論物理学者・京都大学名誉教授。本書は2009年に、08年に南部陽一郎、小林誠、益川敏英三氏が受賞したノーベル物理学賞の内容の解説を建前に、湯川・朝永以来の70年にもならんとする日本の素粒子物理の歴史(とその渦中に身をおくことができた佐藤氏自身)を懐古する内容。個人的な興味に引き付けて言えば、長い探求の末気がつけばロジックの先走りが過ぎて後戻りできなくなった素粒子物理の世界の様子が良くわかるのではないかと思います。2013/10/08