内容説明
「新宿」を舞台に、300年にわたる「生」と「性」の軌跡を描いた、盛田隆二の衝撃的デビュー作。1699年、19歳の青年が下諏訪から「内藤新宿」に出奔する。彼を一代目として流れ出た血の宿縁は、男色者、遊民、歌舞伎子、詐欺師、家出娘など、ことごとく路上の民で彩られながらも、1998年、出稼ぎフィリピーナとの間に子をなす13代目の青年まで危うく一筋に流れる……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
72
なんて壮大な物語。一体登場人物は何人?作者ご本人があとがきで述べてらっしゃるように、若かった(盛田さんのデビュー作)からこそ書けた、とのこと。しかしなんだね、つくづくこの世の中っていうのは、男と女が出会って赤ん坊を産んで、そうして脈々と繋がっていくもんなのね、という当たり前のことを再確認させられる。300年前からの新宿が舞台。土地勘があればもっと楽しめたんだろうなぁ。欲を言えば、もう少し個々のストーリーを落ち着いて書いて欲しかった。展開が目まぐるしすぎ。大好きな盛田さんの原点を読ませていただきました。2015/03/30
90ac
44
何と壮大な! 新宿を舞台に300年の大河ドラマですね。一つの小説に登場させる人物の数は30人が限度と言われていますが、この作品は50人は越えていると思います。下諏訪の“三次”を一代目として十三代目?までその子孫たちの生活を描き続ける。しかしどの代も苦労の多い生活を引き継いでますねぇ。“ひろみ”が東京へ出た1967年というのは丁度自分も東京へ出た年。懐かしさも感じました。第一章がちょっと急ぎすぎて書き込みが少ない感じがするけど仕方がないかな。2015/10/24
まさきち
26
様々な時代の風俗や生活を記す記述は楽しめたものの、登場人物の心情や出来事があまりにも見つけることができず、歴史の教科書か説明文を読んでいる様で正直辛かったです。取り扱う時間軸が長すぎて一つの話にまとめるのは無理があるという印象です。2014/10/17
智哉
13
ちょっと他に類を見ない独創的な作品。ひとりひとりに感情移入するのは難しいものの、それぞれの時代を駆け抜ける苦悩はリアルに感じられた。前半こそ家系図もイメージできたが、後半は少し目を離しただけで混乱してしまい、若干失速した印象。一気読みが必須かもしれない。2013/11/13
ウイロウ
9
元禄時代から(執筆時点では)近未来の一九九八年まで三百年間にわたる新宿の歴史を、ある一族の物語と重ね合わせ描き切った作品。故郷の下諏訪から江戸へ逐電した三次を初代とする一族の人々は、みな性的に早熟かつ放縦であり、その生涯には必ず不吉な影が付きまとう。小児男色・3P・近親相姦と何でもござれの過激な性描写に、一体どんな意味があるのかと最初は戸惑うが、やがて男も女もその澱み呪われた血ゆえに高貴な光を帯びて見え始めるのは不思議。『千年の愉楽』あたりが好きな人ならきっと気に入ると思う、舞台もどこか〈路地〉っぽいし。2015/04/01