内容説明
明治三四年九月、命の果てを意識した子規は、食べたもの、服用した薬、心に浮んだ俳句や短歌を書き付けて、寝たきりの自分への励みとした。生命の極限を見つめて綴る覚悟ある日常。直筆彩色画をカラー収録。
目次
仰臥漫録
仰臥漫録二
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
52
出版するつもりはなく私的な日記のつもりで書かれた書物。そのためか他の随筆に比べて子規の生の生活がそのまま出ているように感じる。基本的に書かれているのは毎日の食事。これが明治の病人とは思えないほどよく食べる。思うにこの頃の子規にとって食べる事はそのまま生に直結していたのかなあ。他に書かれているのは病の事と友人、門下生との交遊記。病の苦痛の描写は読んでいるだけでこちらまで痛々しくなり、その中でなお俳句の改革に執念を燃やす。著者の生きざまというのが、ここでは飾る事無くダイレクトに表れていて、息を飲む思いでした。2023/12/03
yumiha
41
新聞掲載を前提に書かれた『墨汁一滴』『病床六尺』とは違って、本書は公表しないつもりで書かれたのだが、没後に高浜虚子によって『ホトトギス』に掲載されてしまった…。予想通り凄まじい日々が綴られている。カリエスちゅう病気は結核菌によって骨や関節が侵されるそうだから、その痛みはたまらんだろう。リウマチを発症したときの私は、その痛みで10分とすら眠られなかった。それが治癒する見込みもなく何日も続く。「包帯交換」「号泣」「麻痺剤」という文字が痛々しい。病人はワガママなもの。妹の律を非難するような記述もやむを得ないか?2023/03/04
Sakie
15
結核患者は栄養を摂らねばならない。しかし正岡子規は食い過ぎで腹を下したり吐いたり、そのために疲労困憊して衰弱するのではと勘ぐるほどよく食う。1食に粥4椀とか、梨2個とか、桃の缶詰3個とか、菓子パン10個とか、異様だった。さらに菓子パンが不味かったとやけ食いする、団子の要求を無視したと妹をなじる、余命宣告されれば御馳走を食わせてもらえるのにと嘆くなど、自力で布団を出ることすらできない人間から発せられる食べ物への恋着は、怨念の如き生への意志だったのだろう。その衰弱もまた凄まじい。『梨腹も牡丹餅腹も彼岸かな』。2019/09/24
ビスケ
6
壮絶。生きるために、食べて食べて食べまくる子規(時にはおやつに菓子パン10個!)。俳句・絵・日記も書いて書いて書きまくる。そうせずにはいられなかったんだろう。子規はこの「仰臥漫録」の公表を拒否し、あくまでプライベートの日記として日々の出来事を書きつづっていたという。眼前に迫る「死」に対するやりきれなさ、思うように動けないことへの憤りや悲しみ……感情をむき出しにした、正岡子規という1人の人間が見えてくる。2010/11/02
オフ会@大阪
3
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