内容説明
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1940年に開催が予定されていたにもかかわらず、38年に返上された東京オリンピック。「幻の東京オリンピック」の実態を、中止にいたる国際政治の力学、戦時下のスポーツ界の動向、都市開発の様子などを具体例に多数の写真・図版も添えて、多様な角度から照らし出す。
目次
はじめに 坂上康博/高岡裕之
第1部 オリンピックの政治的中立性!?
第1章 IOC会長バイエ=ラトゥールから見た東京オリンピック 中村哲夫
1 招致過程
2 準備過程
3 返上過程
第2章 イギリス協調外交と東京オリンピック――「自然死」を待つ帝国 青沼裕之
1 一九三六年ベルリン大会当時の言動
2 一九四〇年大会のロンドン招致とその撤回
3 東京オリンピックをめぐる論争とイギリス外務省
第2部 東京オリンピックの衝撃
第3章 東京オリンピックのインパクト――スポーツ空間と都市空間の変容 石坂友司
1 オリンピックの招致と大日本体育協会
2 競技場選定問題と都市開発
3 オリンピック返上とスポーツ空間
4 オリンピックが作り出した都市空間
5 オリンピックによる国家的動員・組織化
第4章 二つの東京オリンピック――広告グラフィズムの変容とプロパガンダ 竹内幸絵
1 オリンピック招致をめぐる宣伝戦――雑誌「NIPPON」第七号とオリンピック招致用パンフレット
2 幻の東京オリンピックのグラフィズム
3 進まぬ商業広告への写真利用――高コストという壁
4 東京オリンピック返上と「写真週報」の創刊
第5章 アジアのオリンピック・東亜競技大会――紀元二千六百年の祭典 小澤考人
1 東亜競技大会とはどのような出来事か――紀元二千六百年=一九四〇年六月の情景
2 東亜競技大会はなぜ開催されたのか――出来事の出現に関与する力学
3 紀元二千六百年の到来と東亜競技大会の構想――「体力向上」の祭典
4 アジアの国際スポーツ競技会――「前史」としての極東選手権競技会
第3部 総力戦とスポーツ界/武道界、都市
第6章 大日本体育会の成立――総力戦体制とスポーツ界 高岡裕之
1 日中戦争下のスポーツ界
2 「新体制」期のスポーツ界
第7章 武道界の戦時体制化――武道綜合団体「大日本武徳会」の成立 坂上康博
1 武道発展の「法則」――満州事変後の武道
2 武道国策の樹立――日中戦争のインパクト
3 新武徳会の設立――アジア・太平洋戦争の開戦とともに
第8章 標的としての都市――厚生省による運動施設拡充政策の展開 坂上康博
1 運動施設拡充計画の登場
2 計画の実施――一九三九―四三年
3 綜合運動場の建設ラッシュとその背景
4 数値目標の上方修正と運動場の増設
5 戦時下における運動場の複合的な意義
第9章 都市の思惑――名古屋市瑞穂運動場の誕生 高尾将幸
1 戦前期の公園事業
2 「百万都市名古屋」を目指して――名古屋市の公園事業の展開
3 都市の思惑――地方都市から見た「幻の東京オリンピック」
4 厚生省の誕生と体力向上政策
第4部 統制と奨励の諸相
第10章 学生野球の国家統制と自治――戦時下の飛田穂洲 中村哲也/功刀俊雄
1 野球統制令の制定と学生野球の自治の展開
2 日中戦争下における学生野球の批判・統制と学生野球界の対応
3 太平洋戦争下の学生野球の「官営」化と自治・擁護の主張
第11章 関西メディアと野球――戦時下の甲子園大会を中心に 西原茂樹
ほか