内容説明
旧財閥系の合繊大手トーヨー化成で中堅の筆頭株と自他共に認める森雄造は、常務の川井が主張する拡大強硬路線を批判した。その後、川井の不正を指弾する投書が社長宛に届く。森の仕業だと勝手に決めつけた川井は、手下に彼の粗探しを命じ懲戒解雇に追い込もうとするが……。勇気あふれる企業小説の傑作。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こうせいパパ
59
かなり面白かった。社内で力を持った人間に歯向かったために、報復として懲戒解雇を宣告される。それでも上層部と闘い続ける主人公と、何とかして救いたい同期入社の友人。サラリーマンとして、決して他人事ではない。夢中でページをめくった。半沢シリーズほどの爽快さはないが、読後はややスッキリした。2015/02/09
誰かのプリン
19
本書も実際にあったモデルに基づいて書いている小説。安田海上火災のケースと何だか似通って、会社のトップが会社を私物化しているところがそっくり。会社に尽くして、真面目に働いている人が損しますね。2018/01/23
reo
12
今の若い世代は比較的豊かに育ち、価値観も多様化しているので昔の当たり前が通用しなくなっている。この小説のような懲戒解雇などということはパワハラで会社側が一方的に負けになる案件だろうが、オイルショックの少し後の頃は”行け進めで”停滞は負けの時代。言い換えれば企業倫理もあるにはあったのだろうが、勝てば官軍。目的のためには手段を択ばない人が出来る管理職だった。差し詰め当該常務の川井の凄まじい悪役ぶりは天下一品。いささか出来過ぎの感はあるが、主役の森雄造には実在のモデルがあり実話に近いらしい。物凄く面白い!! 2018/08/17
TAKA0726
7
最後の解説でわかったが、実話に基づき1997年に「辞めてたまるか!」で中井貴一でドラマ化。昔は「会社は自分のもの」と私物化する傲慢な役員やパワハラ、派閥、出る杭は打たれる話はいくらでもあったが、ここで屈したら自分の人生に陰を残すとそれに立ち向かう気骨のある社員も多くいた。小説内では技術屋の評価をやたら自意識過剰で自分の領域だけを守る木を見て森を見ない会社の全体像がわからない、とあるが理系出身の方が勉強量が多いのに日本の企業では報われない事が多いと思う。主人公の森の行動も然りだが友人や知己は増やした。2018/07/08
kuri1632
4
昭和57年と言う時代設定と言うのが大きいですね。現代では全く想像できない展開です。社会を取り巻く環境や経営に対する考え方も成長し変わってきた事が実感できます。それを考えると日本も成長してるんですね。それにしても企業・経営者の考えや慢心、それと反してサラリーマンの苦しみ等当時の時代背景からとてもうまく書かれていると思います。内容的にも面白いしいい作品だと思います。2014/01/05