講談社文芸文庫<br> 蛇 愛の陰画

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講談社文芸文庫
蛇 愛の陰画

  • 著者名:倉橋由美子【著】
  • 価格 ¥1,463(本体¥1,330)
  • 講談社(2014/07発売)
  • ポイント 13pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784062900584

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内容説明

午睡中、大蛇が口から入りこみ、腹中に居すわられてしまった男。彼を<被害者>に見たて、運動に利用しようとする組織。卓抜な発想と辛辣な批評精神で、当時の世相を切りとった「蛇」。性と悪の問題に真正面から挑んだ「蠍たち」――。1960年、「パルタイ」で衝撃的なデビューを果たした著者の、その後の5年間の初期作品7篇を精選。イメージの氾濫する<反リアリズム>の鮮やかさを示す1冊。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

佐島楓

61
ディスコミュニケーションを描いているように思った。それは単純な他者とのものと、性別が異なるものとの間でのこと。愛=性交ではないということを観念的に希求しているような、そこから抜け出せずもがいているような。快感は快感として捉えつつも、本当に愛し合えるのは双生児の兄妹、つまり自分自身。そこに苦悩と絶望が垣間見える。2019/05/03

藤月はな(灯れ松明の火)

25
人の無自覚で無神経な毒や悪意を性愛と絡めている「どこか匂いのない」体液のような物語。学生運動時を舞台に男が妊娠できる世界観や女の入り混じった饐えきった体臭に敏感な皮膚感で描いた物語によって欺瞞や思想の一致のなさと信じられていることに必ず、噛み合わない人間心理にも拘らず理由を求める愚昧さを洒脱且つ痛烈に皮肉っている。「巨刹」、「蠍たち」、「輪廻」、「宇宙人」が好きです。2012/11/05

田氏

23
幻想とか悪夢とかと言ってしまうには容易いが、夢と片付けてしまうには、脂の匂いに血と糞便の臭い、革命の体臭、ひっくるめて生の臭気が強すぎる。粘り気も強い。材木を粘着して釘を使わない家を建てられるくらいに。それほど濃密な粘液の中で、Kという性とLという性とが遊泳する。絡み合うふたつの性は他者性にも見えるし、同一性にも見える。拒絶と求め合いともが同居している。もはや他者を描いているのか自画像なのかも不明瞭だ。手元に目をやると、いま叩いているキーボードのうえでKとLが隣り合っている。ま、それは単なる偶然なのだが。2021/03/26

月世界旅行したい

11
学生の出てくる話が多いけど、なんでだろう? なにか事情があったのだろうか?2016/04/25

ふくしんづけ

9
すごい。精読し始めた瞬間から洪水のように流れ込んでくることばたち。それは頁を眺めていたときからその姿を変えているように見える。少し長めの「蛇」は多少ヒロイックな要素を孕んでいる気もするが、ほかの短編は物語の定石を含まず淡々としたものが多い。鬱屈とした閉鎖的空間とそこにおける対立、は共通した要素だろうか。性別、肉体、宗教、集団、あらゆる境における対立。そしてそれらを相容れないとして描くことに文が費やされ、どうしようもない倦怠感が残る。「貝のなか」「巨刹」「愛の陰画」など、短いものほど冒頭の吸引力を一貫した→2021/02/27

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