内容説明
結婚を目前にして、最愛の女性・晶に裏切られた正平。それから5年。苦しみながらも、家業である甘味処「博多ぜんざい・ナカムラ」の仕事に打ち込んだ正平は、店舗を増やし、成功を収めていた。そんな中、突然の、晶からの電話。再会で明らかにされる、想像を絶する別離の理由とは…。表題作のほか「20年後の私へ」「たとえ真実を知っても彼は」「ダーウィンの法則」を収録した傑作恋愛短篇集。いずれも、目に見えない“大切なもの”が、読んだあなたの心にのこる傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
292
白石さんは、オトコとオンナの深淵をエグる作家さんだと思う。今回も出会いの運命、そして繋がり続けることもまた運命、の彼の持論に激しく同意しながら読了。『ダーウィンの法則』の冒頭「人間という動物にとって何より大事なものはスキンシップだ」にもヤられた。ひとはスキンシップを求めて、恋愛やら不倫やらする動物だからね。ただしそれが高じて、子どもを保育園に預けて働くお母さんを(主人公たちのセリフを借りて)批判したのはどうかと思う。これだけで、当分彼の作品はもういーや、という気持ちになったわ。2018/02/16
遥かなる想い
112
現代に生きる男女の愛を描いた短編集である。 会社の風景が ひどく親近感を覚え、 美男美女、エリートの頻出が 著者らしく 世俗的でわかりやすい。表題作の 晶という女性の人物造形がいい… 定番だが、著者らしい現代の恋の物語だった。2022/10/05
りゅう☆
96
結婚生活の大部分を夫に浮気され続け離婚したが再会。幸せそうな元夫が腹立たしい。仕事にも不安を覚えたある日、20年前に『20年後の私へ』宛てた手紙を読んで感じたこととは…。/かつての担当作家が亡くなった。妻と結婚する前まで浮気し続けていた作家の嫁との再会。そして妻にも秘密が。その『真実を知っても彼は』…。/家庭ある男と不倫をしている。彼が言うにはスキンシップが大切だと。過去に亡父が不倫をした愛人宅に押しかけたことある。自分も同じ道を辿るも、諦めた亡父とは違う自分の正直な思いに気付く。/元恋人に裏切られるも→2021/07/01
chimako
73
傑作恋愛小説集と説明がある。たしかに恋愛小説だろうけれど、何だろう [恋愛小説]の字面からの印象とは程遠い。人を好きになるのに理屈は要らない。けれど、好きであり続けるのにはやはり理由が有るのだろうと思う。大人になると「恋愛と結婚は違う」と悟ったりするけれど、それでも妻を欲しいのか、愛しているから妻になって欲しいのかに拘る気持ちは分かる。あとがきが良い。簡単に人を傷つけることが出きるのは自分のことを知らず知ろうともしない者。なるほど。表題作の終わり方がとても好きだった。微笑ましくて鼻の奥がつんとする。2015/08/18
Atsushi
69
四話からなる短編集。「20年後の私へ」が良かった。離婚歴のある39才の女性が、短大時代に書いた20年後の自分宛ての手紙に励まされ、自らの想いを信じ貫くことを決意する。主人公に好意を寄せる安西君の優しさに惹かれた。『人間は誰かに幸せにして貰うことも、自分だけが幸せになることもできないのだろう。人間にできるのは、恐らく誰かを幸せにすることだけなのだ』とは泣かされるセリフだ。2018/08/23