内容説明
小さな村に疎開してきた美しい姉妹。ひとりの男をめぐり彼女らの間に起こった恋の波紋と水難事件を、端正な都会的感覚の文章で綴った表題作ほか、空襲下、かつての恋人の姿をキャンバスに写すことで、命をすりへらしていく画家との交流をたどる「白い機影」など、初期作品8篇を収録。静かな明るさの中に悲哀がただよい、日常の陰影をさりげないユーモアで包む、詩情豊かな独自の世界。「小沼文学」への導きの1冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
123
「村のエトランジェ」女心を弄ぶなかれ 「ニコデモ」若く美しく言葉に力みなぎるイエスがみえる。「白孔雀のいるホテル」冗談じゃない牧歌的世界は、不自然な現実を引き寄せ、不幸の影をフーっフーっと消していく。「登仙譚」鬼門は女人だけにあらず 「紅い花」情と愛の差が分からぬ 「汽船」ミス・ダニエルズへの思いをなんと名付ける… 「バルセロナの書盗」説得力がない 「白い機影」ハタ夫人の冷血。全体を通し女性への見方が…。娼婦は通り一遍で、女は本は読まず、愛には冷酷。さりとて小説の面白さは減らぬが。2018/09/04
NAO
60
小沼丹は、もともと詩を書いていたそうだ。やがて、詩をやめて小説を書く決意をしたという。『村のエトランジェ』に収められた8つの作品には、詩人がよく登場する。他にも2つの作品で画家が登場するし、この短編集の中の芸術家は、深い意味を持っている。画家が登場するからというわけではないだろうが、どの作品も、とても絵画的だ。自然豊かな地(田舎はもちろん、東京であってさえも)舞台とし、どこかに戦争の雰囲気を感じる、淡く、脆く、危うい世界。その淡さ・危うさ・脆さは、作者が詩と決別しようとしている心象風景でもあるのだろうか。2023/05/22
kana
37
新潮文庫の100冊に入っていても不思議でないくらい、きっと誰が読んでも妙に心地よくなれる作品集です。小気味良く美しい文章に大正~昭和初期のモダンな雰囲気も趣深く素敵だし、「もっと評価されるべき」タグがあったらとてもつけたい!スペインの愛書狂の殺人事件を描いた「バルセロナの書盗」からの戦時中の漠然とした不安を水彩画のようにさらりとしたタッチで描いた「白い機影」の流れがとても好き。「白孔雀のいるホテル」の浮世離れした感じもたまらない。日当たりの良いカフェテラスで苦めのカプチーノと一緒にまったり味わいたい一冊。2013/07/30
シュラフ
26
「二人の懐中は早くも冬枯の状態で、白樺荘の三日分の宿賃ぐらいしか残っていないこと、だから、もし無理に追出そうとするなら二人並んで二階の窓から首を吊っても差支えないこと、なぞを知って開いた口が塞らなかった。」(白孔雀のいるホテル)独特の雰囲気をもつ作風がどこからくるのか考えてみると、登場人物みんなが のんき なのである。自意識過剰な人間は、絶望したり苦悩したりで自分を追い込む。しかし のんき な人間はお気楽で、あるがままの状況を受け入れる。くよくよ悩んだって、他人からみればちっぽけなこと。のんき が一番だ。2018/08/30
ホレイシア
16
小沼作品が好き、というこの気持ちはもう理屈ではないのだ。どれが好きか一つ決めろと言われたら何日も悩むだろう、それぐらい相性がいい。ずっと浸っていたい文章と世界。言葉にすればするほど陳腐になっていくので、この辺でやめておく。今、私は世界一幸せ。2010/11/21
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