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内容説明
戦後教育において「平等」はどのように考えられてきたのだろうか。本書が注目するのは、義務教育費の配分と日本的な平等主義のプロセスである。そのきわめて特異な背景には、戦前からの地方財政の逼迫と戦後の人口動態、アメリカから流入した「新教育」思想とが複雑に絡まり合っていた。セーフティネットとしての役割を維持してきたこの「戦後レジーム」がなぜ崩壊しつつあるのか、その原点を探る。
目次
プロローグ 平等神話の解読
第1章 対立の構図と問題の底流
第2章 戦前のトラウマと源流としてのアメリカ
第3章 設計図はいかに描かれたか
第4章 「面の平等」と知られざる革命
第5章 標準化のアンビバレンス
エピローグ 屈折する視線-個人と個性の錯視
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんがく
11
公的文書の引用とデータ分析が続く硬質な研究書で正直読みづらくて難しいが、教育問題をわかりやすい批判の的にしようとする世間の風潮へのアンチテーゼとしては有効だと思う。2023/05/09
isao_key
11
日本の学校教育の理想とは、授業のやり方や教育の内容次第では「全員が百点」をとれることが正しい教育だとされ、受け継がれてきた。本書は実際にその理想通り、学校は機能してきたか、地域での格差はどうであったかを解明している。かつては僻地の生徒のテストの平均点は、全国平均に比べてかなり劣っていた。現在では財政的に豊かな県と、財政的に厳しい県とでの学力調査平均点の相関関係は、ほとんどないが生活保護世帯の比率が高い県ほどテストの点が低くなる傾向は相変わらずだという。所得格差と貧困児童をいかに救えるかが、今問われている。2017/04/15
Lulo
2
主張が丁寧で、謙虚で、興味深く、わかりやすかった。 引用されていたデータ一つ一つが面白く、もっと丁寧に読み返してみたい気もする。圧倒的に高い識字率を誇る日本、個性のなさばかりが取り沙汰されがちだが、学習指導要領等が果たした成果は大きいと個人的に思う。どんなことを議論するにせよ、教育の話題になると、教育への過度な期待を感じるし、教育を評価するのは難しいなぁと思う。2019/08/11
もくそん元帥
2
『大衆教育社会のゆくえ』の続編。今までになかった切り口で現代の教育を論じている教育社会学の良書。2012/09/18
_udoppi_
2
戦後の教育行政・財政の分析を通じて、日本の教育そして社会が何を平等と考えてきたのかを明らかにする。すなわち、日本における平等は、個人の自由の理想に基づく「パーヘッドの平等」ではなく、教材の細部に至るまで画一的な「面の平等(学級を最小単位とする均質な教育の提供)」であった。それは文部省による強制によるだけでなく、地域間の教育格差を縮めようとする点で軌を一にしていた日教組を始め地方の意思と一体で行われた。非常に論理的で読みやすい本をお書きになる、ひそかに尊敬している著者。学歴をめぐる社会の基底への示唆に富む。2010/11/11