内容説明
夏は着古したランニングシャツ、冬は野良着のような作業服。生涯独身で定職に就かず、酒とペーソスを愛した隻眼の歌人、山崎方代。虚言と奇行を繰り返しながら、短歌一筋に生きた異端の歌人に迫る。※本作品は紙版の書籍から解説が未収録となっています。あらかじめご了承ください。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
93
生き放題に生きた方大の短歌と人生の 物語である。いっさい職につかず、結婚もせず、好きな歌を作り、好きな酒を飲み放題の人生である。あまり馴染みのない短歌の世界が 新鮮に読める。 歌人としての誇りを胸に 自由に生き抜いた、ひとりの歌人の評伝だった。 2023/02/12
藤瀬こうたろー
25
種田山頭火や尾崎放哉のような、「漂泊の歌人」と言われる山崎方代の生涯を辿った作品。山梨県の農家に生まれ、戦争に行き片目を失明、その後は粗末な家に住み、無職・独身で、日々酒を飲み、気ままに歌を詠んで生きた方代。その割には世俗的で、歌人として自分をマスコミに売り込むことが好きで、大ぼらを吹きまくり、その割に周囲の人には不思議に嫌われず、むしろ慕われてるのは天衣無縫だからか。生涯でただ一回の方代の恋とされる和歌山県の女性、弘中淳子に実際に取材していて貴重。「一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております」2024/02/03
夏野菜
5
出色のノンフィクション。山頭火、放哉と並べられる、伝説的な歌人の生涯を淡々とした筆致で綴る。天下の奇人の評伝なので、面白おかしく書くのはわけないだろうが、淡々と事実を積み上げて行く。解説で川本三郎が書いているように品がいい。短歌も人生も定型にはまらない男。周囲の好意を食べて生きているような男。短歌には真摯に取り組んだ男。常連だった中華屋の主人の家の庭に草庵を作ってもらってそこに住んでいた男。大ボラふきで、世俗的な名誉欲は人一倍ある人間臭い男。こんな破格の歌人はもう出てこないのでしょう。2013/10/01