内容説明
人間の深い心理を描き、日本近代文学史上屈指の文豪と言われる漱石は、ホラー小説の名手でもあった!本書は、ショートショートや長編小説、エッセイなどの漱石作品の中から、ホラー・オカルト色の強いエピソードを集めた名品集である。霊魂、妖怪、魑魅魍魎、恨み、呪い、恋心などをテーマに、夢の中で語られた10の怪奇なストーリーを集めた傑作『夢十夜』。漱石の出世作『吾輩は猫である』の中の、一癖も二癖もある登場人物たちが語る、妖しくも艶やかな体験談。何気ない日常のすぐそばにひそむ闇と幻想と死の世界を淡々と描写した『永日小品』。子のない夫婦、宗助と米の悲しい運命を描いた、漱石三部作の一つ『門』。危篤を脱した漱石が入院先で出逢った、謎の隣人のことを綴ったエッセイ『変な音』。男と女の魅かれ合う恋心を描いた、淡く切なく妖しい明治の恋物語『趣味の遺伝』。エンターテインメント性に溢れつつも、存分に恐ろしい漱石の「怪談」を堪能する!
目次
『三四郎』より<br/>『夢十夜』<br/>『永日小品』より<br/>『門』より<br/>『硝子戸の中』より<br/>『変な音』<br/>『吾輩は猫である』より<br/>『思い出す事など』より<br/>『趣味の遺伝』
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
行加
13
物置から発掘して、風呂本用に。(^_^;) 漱石とホラーって、意外な感じもしましたが、そういや「夢十夜」はこの人でしたねwww 勿論「夢十夜」は丸々収録ですが、それ意外の抜粋掌編も恐くて面白かったですv 「吾が輩-」の迷亭が語る、首吊りの木のエピソードは、まんま「新耳袋」にもありましたね〜w さすが、百間先生のお師匠さんですv2016/03/22
静かな月を見てる
7
「夢十夜」が、やはり抜群にいい。昔っから第三夜がいちばん好きだ。ホラー色が強くていい話。第六夜も好きだなぁ。こちらは運慶が護国寺の仁王を彫る話。収録作品はどれも不思議な話であってホラーではないと思う。もっと怖いものを想像していたので残念だった。2022/05/24
donky
6
編者の簡潔な解題がいい。漱石作品の推理小説的要素、怪談話めいた構想はこれまでも楽しんできましたが、傑作選と銘打ったアンソロジーに改めてその妙味を気づかせてくれました。編者は「まえがき」で円朝の影響を踏まえながら”霊感の強い”人、漱石を語っていますが、同感です。この選集で初見の「趣味の遺伝」は、面白かった。日露戦で戦死した好男子への哀悼が戦争忌避を抱かせた。でも狙いはその先にあるとは…。墓参で遭遇する美女を探索する物語なのだった。ロマンティックで奥行きある因縁、幕末秘話を織りなす恋心の遺伝が素晴らしい。2017/07/01
いくっち@読書リハビリ中
6
漱石ホラー傑作選というよりは漱石怪談噺集と言った方がしっくりとくる。意外にも怖い話が好きだったという漱石。長編から抜粋しても違和感なく楽しめた。特に「吾輩は猫である」は面白いのだなあとちゃんとまともに読んだことのない自分を叱咤しましたよ。「永日小品」「硝子戸の中」「変な音」など日常の中にあるふぅわりとした怪異がなんともいえない。それぞれの鑑賞のヒントも面白かった。作品を丸ごと読むときっともっと面白いのだろう。2009/09/18
蛸
4
夢十夜が好きなので「漱石のホラー」という切り取り方に惹かれて読んでみた。ホラーと銘打っているが、不思議な話や神秘的な話もたくさん載っていて、新耳袋みたいな感じ。面白かった。永日小品は初めて聞いた。私の実家のトイレにモナリザのコピー絵が飾られていて不気味だったのを思い出して笑った。他の小品も読んでみたい。2019/10/04