内容説明
ヒトは神経の集積体である。アリストテレスが考えた動物精気にはじまり、カエル、イカ、アメフラシ、哺乳動物、さらにヒト脳へ――試行錯誤にあふれた実験の歴史とともに、神経の病、最新の脳生理学までをひもといていく。奇想と執念、愚行と新発見、今となっては常軌を逸した“人体実験”にいたるまで、あまたの科学者たちが挑んできた、人間行動を支配する「神経」解明への道のりとは。
目次
第1部 動物から解き明かす(カエルの足;イカの背中;アメフラシの腹;ネズミの背骨;ネコの脳)
第2部 ヒト脳の解明に挑む(ヒト脳への挑戦;神経からの放出;動物的な脳;神経病への挑戦;脳新時代)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Humbaba
13
科学技術は現在わかっていることが全てというわけではない。むしろ、将来の研究によって現在の定説が覆されることも少なくない。だからこそ研究に対して真摯な姿勢を貫くことが重要になってくる。互いにの結論に納得出来ないこともあるだろうが、そのときには証拠をもった上で議論することが唯一の道である。2017/05/05
木ハムしっぽ
10
本書は神経の膨大なネットワークである脳の働きに迫る研究の足跡を草創期から順に追って説明してくれる。カエルに始まり、イカ、アメフラシ、ネズミ、ネコそしてヒトに研究対象が進んでいった。本書では研究者らの情熱や著者のウィットに富んだトリビアルな話題が多く挿入されるのも良い。 精神分析で著名なフロイト、コカの葉からの抽出物(コカイン)を飲んで自身の神経衰弱を治したが、仲間の医師らに勧めて批難され、精神分析に転身したらしい。著者が駆け出しの頃、旅館の相部屋になった権威ある教授に講釈を垂れた過去など。読み物としても◎2022/11/30
カツ
4
興味本位で読んだがちょっと専門的過ぎたか。ロボトミー手術の話が気になった。日本でも随分と行われてたんですね。しかも、だまし討ちや強制的に。おそろしや。恐ろしや。2019/05/29
raizou27
2
著者の性格なのか、歴代の脳研究者の人柄が好ましく感じられる。研究の進展は、著者の研究生活に重なるほど、始まったばかりなのだ。2022/03/05
牛タン
2
動物の神経からヒトの脳まで、科学者の逸話や研究にまつわるエピソードを交えながら解説する。神経の働きに関してあまり専門的につっこんだ説明はされないが、最前線の研究の様子や研究者の政治的争いが描かれていて、ある意味面白かった。後半の3章で、神経病に関する話題がいろいろ取り扱わていて勉強になった。ロボトミーはロイコトミーを誤って執り行った手術方法だというのは初めて知った。時々、説明に飛びがあるのが気になったが理系の人ならば少し考えれば埋められる程度のものかとも思う。図版が一個もないのは少し配慮が足りないかなと。2015/04/11