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内容説明
「言葉は意識の産物である。現代は意識優先、つまり脳化社会で、だから情報化社会になる。人生は『意識のみ』になってしまった」……。著者はあまり言葉を信用していない。言葉を読み過ぎず、先を読まず、解剖学者の眼で世の中を見つめ、静かに考える。すると現代日本人が気づかない、人間社会を取り巻くシステムが立ち現れる。たとえば、著者は本書で以下の意味のことを述べている。「秩序は同量の無秩序と引き換えでないと手に入らない。文明とは秩序であり、秩序を構築する過程で同量の無秩序を生み出している。それが炭酸ガス問題、環境問題の本質である。代替エネルギーもどうせ同じことであり、どこかにエントロピーを増やしてしまう」。日本人がこれからどう行動するかを考える上で、無視できない指摘ではないだろうか。本書は月刊誌『Voice』で2002年からはじまった好評長期連載「解剖学者の眼」を完全収録した時評集。石油問題、自衛隊のイラク派兵、靖国参拝、振り込め詐欺、オリンピック…。日本のこの7年を振り返りつつ、普遍的な視座を提案する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Sakie
20
巷の雑多な時事を扱った、養老先生には珍しい時評集。20年近く前の話題が古びて感じないのは、養老先生が言うことが変わらないからか、人間というものが変わらないからか。ちょうどSARSやMARSの頃で、それについても触れていて、各国の統計数値がおかしいのは今に始まったことではないと再認する。私も、世の一つ一つの出来事について怒ったり嘆いたりせず、自分の軸で判断した後はすっぱり割り切って行動する年代に差し掛かったのかもしれない。『一段先を考えるのは、たった一段階なのに意外に難しい』。でもその一段がめっちゃ大事。2020/05/16
ねこ
19
隣家に住む聡いおじいちゃんに話を聞く、そんな感じの本。第四章の未来への責任感という時評が一番印象的でした。今の若者たちに読ませてやりたい。 といっても私もそのうちの一人だけれど…2015/01/22
ことちん
16
雑誌の時評をまとめた本。2009年3月発行なのに、2015年2月に読んでも少しも古くなくて驚き。震災の事、エネルギー問題、テロ、靖国、中国韓国問題…それらの問題に昔から危機感を持っていた著者の鋭い見識には驚くばかり。個人的には、「まえがき」と最後の「マトモでない私」が一番養老節が効いていて面白かった。2015/02/07
K K
16
相変わらずの養老ぶし。非常に面白い!私も政治が大嫌いで選挙なぞ、養老さんと同じ理由で行ったことがない。とてもユーモラスで笑いを抑えながら通勤途中一気に読みました。考えさせれるところが多い。辛辣だか多分に人間的でかわいい方ですね。マトモでないと思って生きてきたから、すごく共感した。変わらない自分なんかない、一番ささった。2014/10/21
阿部義彦
12
養老孟司さんの、エッセイ集。世の中何でも都市化して、ああすればこうなるの思考が支配しているが、はたしてすべてがそう簡単に理屈どうりに行くわけが有りません。人間自体が自然の一部である事を忘れることなかれ!そして自然はどうやっても人智で左右できるものではない事を肝に銘じるべきだ。2016/02/28