内容説明
妻子ある男を好きになってしまった銀行勤めの伴子。男と結婚するのに必要となる三千万円を横領するが、たった一枚の百円玉が、その運命を反転させる「百円硬貨」。毎日弁当を作り、ボーナスで洋服を仕立てて、年下の男に尽くす滝子。男が若い女と結婚することが決まり潔く身を引くが、結婚前夜に男が訪ねて来て……「記念に」。愛を求めるあまり転落してゆく女たちを描く傑作短編十一編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けぴ
56
原稿用紙30枚の規定で作られた11編。男女関係のもつれを中心としたよくある題材の中で、『誤訳』は異色の出来映え。少数言語の詩人がスキーべ賞を受賞した副賞の賞金を寄付すると述べる。しかし翌日、そんな事は言った覚えは無く、通訳の誤訳であったとするのだが、実は……。巻末の阿刀田高さんの解説が、短編の出来不出来をズバッと言っており、納得することものもあれば、ハテナのものも。解説でここまで踏み込んで批評するのも珍しい。2021/09/05
こばまり
54
清張先生怒涛の30枚縛り。昭和の女は大変だ。ここ半世紀の価値観の変化にしみじみするも、恋慕や邪推、嫉妬に復讐心はお馴染みの感情だから、つい頁を繰る手が止まらない。虫明亜呂無氏、阿刀田高氏と解説も豪華。2020/09/21
ナキウサギ
48
ここまで、女の気持ちに近づいて表現されると思わずキョロキョロ周囲を見渡してしまう。これ私のことかな、、あの時こんな振る舞いしたような、、 わざと読者に問いかけるように。。。遠い目線で結ぶもの。第三者の方から冷たく終わらせる関係。。。女性とはこんなに計算高く男性を見積もっているのか。慎重で大胆そして、破滅的。どれも最後の一行まで楽しめた。。2021/05/20
きょちょ
27
清張晩年の短編11作。 出だしの「足袋」や、続いての「愛犬」は、ややホラーっぽい作品。 割と好み。 「百円硬貨」は、晩年の作品としてはいかがなものだろうか?初期の作品というなら頷けるんだけど・・・。 「再春」は、ちょっとしたどんでんがえし。 けれど、小説というより、なんだかゴシップ話的なものが多いように感じてしまった。 ★★★2021/04/05
きのこ
20
女の情念を描いた11の短編集。「誤訳」と「お手玉」が特に印象的。字数制限の執筆にしては、女性complexerの清張の屈折した描写がそこここに出ていて面白かった。2015/10/28