内容説明
日本では森林という莫大な資源が増え続けている。多額の公共事業や補助事業が行われながら、建築材を採るために植林した人工林は切られず、木材自給率は二割である。林業は旧態依然とし、死傷事故も多発している。国産材と共にあった伝統木造は建築基準法で建築困難になった。我が国土で一体何が起こっているのか。リアルな実態を現場の「生の声」で伝える。森と木をめぐる社会の仕組みを根本から問い直す一冊。
目次
第1章 日本の森でいま、何が起こっているのか
第2章 日本の木を使わなくなった日本人
第3章 補助金制度に縛られる日本の林業
第4章 公共財としての森と欧州の発想
第5章 建築基準法で建築困難に陥った伝統木造
第6章 大工棟梁たちは何を考えているのか
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さきん
19
日本では森林という莫大な資源が増え続けている。多額の公共事業や補助事業が行われながら、建築材を採るために植林した人工林は切られず、木材自給率は二割である。林業は旧態依然とし、死傷事故も多発している。国産材と共にあった伝統木造は建築基準法で建築困難になった。我が国土で一体何が起こっているのか。リアルな実態を現場の「生の声」で伝える。森と木をめぐる社会の仕組みを根本から問い直す一冊。土地問題がなかなか痛い。2015/09/02
香菜子(かなこ・Kanako)
9
森林の崩壊。白井裕子先生の著書。日本の森林行政や森林管理の問題点がよくわかります。現行の森林行政や森林管理は無駄が多くて旧態依然。誰のための森林行政や森林管理なのでしょうと思いました。2018/01/18
apty
5
アメリカの影響を受けている日本が混乱の一途を辿る理由は思想から考えるだけでは足らず、環境を通しても考えなければならない事を教えてくれる。そして、行政がいかに時代錯誤と化してしまっているか。着物や伝統工芸が見直されているのも、それが日本の歴史を通して、日本に適したものである証左にも思える。今のままアメリカ式でやっていけば、日本の特色でもある長い歴史は失われて、現代と完全に断絶してしまうだろう。そういう事を林業に関する話を通してではあるが、思った次第です。2014/04/15
桃の種
4
日本の林業も木のようにしなやかに。2020/02/05
ヨッフム
4
数十年単位で取り組む産業である、林業。日本の行政における、画一的な管理システムの問題提起を著した本です。川上(伐木する作業員)から、川下(建築に携わる大工)まで、素人にも流れが分かりやすい地に足が着いた構成が良いですね。着々と体力を奪われていく地方の自然と、システムに翻弄される現場の悲鳴に筆者の、静かな怒りが伝わってきます。俯瞰的な知性をもつ官吏登用と、市民間の、経済以外の視点で森林の価値を語る場の必要性を強く感じました。明るい話題は少ないけど、環境問題を語る一次資料として重宝させて頂きます。2014/01/30