内容説明
幕政での栄達という青雲の夢破れ、47歳で平戸藩主を隠退した松浦静山は、以後82歳で没するまで、学芸に親しみ、怪談奇談に耳をそばだて、隠居仲間やお抱え相撲取り・弓職人など多彩な人々との交流を楽しんだ。老いのため息を洩らしつつ、本所下屋敷での隠居暮らしを生き生きと綴った江戸後期屈指の随筆『甲子夜話』を中心に、「老侯の時代」を活写する一級の江戸社会史。(講談社学術文庫)
感想・レビュー
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HANA
60
『甲子夜話』を通じて江戸後期の大名生活や隠居後の事などを描いた一冊。大名の出世レースに敗れて隠居とどこか聞いたような話ではあるが、本書記す所のその隠居後の生活が滅法面白い。高齢化する幕臣を通じて江戸の老いの意味を探るのを手始めに隠居後の人間関係、そして江戸に伝わる巷説。特に有名な墓石磨きや鼠小僧の処刑を見逃した話等、特に興味深いな。題材のせいかも知れないけど、この著者の作品って残酷なものを題材にしていても、どこか駘蕩とした江戸の空気が漂ってくる。本書もその例に漏れず、読んでいていい気分になれる本でした。2021/09/10
おせきはん
22
江戸時代後期のお殿様の日常生活、墓石磨きや鼠小僧がいた社会の様子が臨場感をもって紹介されています。当時、70代、80代まで退職せずに働き続けた武士も多かったことは、意外だったと同時に、現代に通じる親近感も持ちました。2023/10/19
出世八五郎
11
(悠悠自適―老侯・松浦静山の世界 平凡社ライブラリーを改題)。全何十巻という甲子夜話の中から、大名暮らし,高齢化する幕臣,墓石磨き,鼠小僧などを取り上げ一冊にまとめた物。全巻読むことを考えるとお得だ。執筆者松浦静山の身の回りで起きた出来事のみを取り上げてる。封建制度と現代社会の違いはあるが、人間というものは変わらず悩み老いてゆく。病苦の人間が、とある人間に『人に目撃されずに墓石を磨くと病が治る』と言われ起きた墓石磨き事件など滑稽であり切実で、全編通して可笑しさといずれ死にゆく人間存在の悲しさが漂っている。2014/03/22
まみよろ
3
江戸時代中末期の人々の隠居だのなんだのについての話や義賊鼠小僧についての話など面白く、江戸時代の人々に親近感が湧くのだが・・・ 如何せん私にとり最初の方の「その音の盗み聞きを試みた」の部分の『侍従少将々々々々とぞ聞へたり。彼婦人放屁せり。その音諸大ぶうとぞしたりける』の部分がおもしろすぎて頭から離れなんだ。 こんなことで官位昇進の吉凶を占ってるのがばかばかしいというか微笑ましいというか。2013/03/04
げんさん
2
甲子夜話の筆者、松浦静山の生涯を解説。非常に読みやすく、江戸後期の大名の暮らしぶりが分かる