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内容説明
「汚い」とはいったい何か。見た目か匂いか、触った具合か、それとも文化か慣習か――。「鼻くそ」からはじまって、金田一先生の授業は言語学から文化人類学、精神病理学に構造人類学等を経て、人類の起源そのものへとさかのぼっていく。自由自在にさまよい、動いていく思考の軌跡が、ひとつの日本語がたどって来た壮大なドラマを解き明かす。学識とユーモアにあふれた、世界一汚い、そして面白い言語学講座。
目次
「汚い」のオリエンテーション
字義では視覚か、触覚か
触るという身体知
メタファーによって認識する
ことばの意味と使い方
相対と絶対のあいだ
文化と習慣から考える
所有と裁量から考える
なぜ「汚い」を恐れるのか
中心と周縁の境界線上にて
アナログからデジタルへ
「汚い」の起源と日本人
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
青木 蓮友
11
なんだか大河に顔を浸けていたような読後感だ。ひとつ言おうとするとこんなまでになるんだ、大きな渦にぐるぐるされていたような気分、でも、すっごく楽しい。最終的に結局どうということはなく、またあり得ず、生きているというのはこういうことだなと腹の底からわかったというかんじ。暗黙知と明示知の話に膝を打った。それと、所有物と自由裁量権の話がめちゃくちゃ面白かった。あまりのきっぱり感に目から鱗、自分の身体は自分に自由裁量権はない、自然には圧倒的な裁量権がある。すっきりした。2015/12/04
遊々亭おさる
11
著者は、かの有名な名探偵、金田一耕助の孫で……嘘です。お祖父さんは京助さんです。一度、言ってみたかった洒落です。くだらなくてすみません(__)「汚い」という言葉を切り口にして話はその言葉が持つ概念から肉体的に弱者だった我々の祖先が苛烈な生存競争を生き残り今に至る繁栄をもたらした謎にまで踏み込んでいき、果ては日本人の美意識まで辿り着く。面白いけれど、新書なのに生活には役立ちそうにない。けど、こういう思考の仕方を身に付けられれば、貧乏でも彩り豊かな人生が送れそう。楽しく学問する。こういう人に僕は憧れる。2014/09/18
Lucy
3
日本語の汚い言葉、タブーな言葉が書いてあることを期待して手に取ってみたけれど、全然内容が違った。主な内容は「汚い」という言葉の字義について。汚いって意外と広い意味で使う言葉。汚れているや汚らわしいというのとも少し違う。にもかかわらず、その微妙な差を誰かに教えられた訳でもなく、使い分けている。考えてみれば深いけれど、考えてみるまでもないような気もする。そういえばそうだなと納得しながら読了した。2015/07/19
Unicorn
3
「汚い」と「汚らしい」「小汚い」などの言葉の比較を考えていく話。また、この本の中で、外国人に日本語を教えることの難しさが書かれている。以前、知り合いの外国人とLanguage Exchangeをしていた時、「これはどうしてこうなるの?」と聞かれることがあったけれど、私はそれについて深く考えることがなかったからうまく説明が出来なかった。普段何気なく使っている言葉でも、他人に教えようとなると難しいものなのだ。だから、明示知と暗黙知の部分はとても興味深かった。 2011/10/20
てながあしなが
2
汚い語(例えば、罵る語)に関する本ではなく、日本語の「汚い」がさす内容、意味とは何かを考察する本であった。認知論や意味論、文化論などの様々な観点から「汚い」を考察。結論として、日本では「汚い」は倫理観と大きくかかわっており、その美学に反するものは「汚い」として触れないようにした、ということが述べられていた。しかし、脱線が多く、少々論旨を捉え辛く感じた。また、五感のヒエラルキーに関する話、所有に関する裁量権の話も興味深かった。2015/09/12