内容説明
満州を珍道中した漱石、女一人でシベリアを横断した林芙美子、憧れの都パリを目指した荷風、利一、開戦間際のアメリカ大陸を駆け抜けた野上弥生子……明治以来、海外旅行は日本人にとって憧れだった。特に世界各地で張り巡らされつつあった鉄道は人々の旅愁を誘ったのである。そこには今とは対照的にスローテンポな車窓風景があった――。紀行文をひもとき、もはや忘れてしまった贅沢な時間、近代旅行史を振り返る。
目次
第1章 戦前日本の徒花・満州・東亜旅行圏
第2章 航路よりも速い欧州への道・欧亜連絡ルート
第3章 文人はみな華の都を目指す・フランス紀行篇
第4章 鉄道のパイオニア・イギリス紀行篇
第5章 海峡をはさんだ二都連絡路の歴史・英仏連絡ルート
第6章 河沿いの風光明媚・ドイツ紀行篇
第7章 ルネッサンスの発信地・イタリー紀行篇
第8章 広大なる横断の試み・アメリカの鉄道篇
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さっと
5
夏目漱石、永井荷風、里見弴、林芙美子、横光利一、野上弥生子の紀行文をテキストに、日露戦争後の満州権益獲得で陸路によるヨーロッパ行きがより身近になった当時の鉄道洋行が鮮やかによみがえる。厳密に言えば漱石や里見は満鉄に招かれての満州見聞記で、永井、横光、弥生子はヨーロッパほか滞在記の印象が強く、大陸横断の濃密度では芙美子がイチバンに感じる。いまでは里見の著作がいちばん入手しづらそうだけど、同行者が最近読み始めている志賀直哉と知って、これは気になるw2022/02/13
Koki Miyachi
1
タイトル通りの内容。文豪たちの大陸横断鉄道を使ってきた歴史を文献等をもとに整理している。だからどうだったというその先のハナシがあると良かったな。2023/11/03
rbyawa
1
i048、悪い内容というほどでもないが林芙美子以外は正直内容が薄く「文豪」どうのというにはなぁ…。あと思い込みが激しいと言われていた横光氏は欧州に同期の作家が戯曲家として滞在しているので…多分現地知識あります。あくまで旅行の有名文士が少ないだけで他の職業の人らは本で語られてる通りに結構な人数いたからなぁ…彼らの仲間も普通にいるというか…。大正から昭和に掛けてのど素人の旅行者の本として読む分にはいいんじゃないのかな、鉄道や旅行社に関しては満足の行く出来、産業や土地の話に絞って作家の言及は一部で良かったかも。2018/08/09
つれづれ
1
戦前、海外鉄道旅行黎明期の状況を概観できる。「近代旅行」に興味を持つきっかけとしての「入門書への入門編」といったレベル。林芙美子ら文人の紀行文や当時の雑誌からの引用部分が多く、図版もほとんどないので、知的な面白味には欠ける。思わず書いてしまうのだろうが、紀行文に対する著者の単なる感想のようなものが時折みられ、興を削ぐのも残念。2009/06/18
とかねね
0
文豪たちの列車での陸路の旅。紀行文から旅の様子が分かります。もう少しメジャーな文豪が登場すると思っていたら、読んだことがない文豪がほとんどでした...。2016/07/20