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内容説明
日露戦争後、職業外交官の道を歩み始め、欧米局長・駐ソ大使など要職を歴任した広田弘毅。満州事変以降、混迷を深める一九三〇年代の日本で、外相・首相として、欧米との協調、中国との「提携」を模索する。しかし、二・二六事件以降、高圧的な陸軍と妥協を重ね、また国民に広がる対中国強硬論に流され、泥沼の戦争への道を開いた。東京裁判で唯一文官として死刑に処せられ、同情論が多い政治家・広田の実像に迫る。
目次
序章 二つの顔
第1章 青年期-福岡から霞ヶ関へ
第2章 中国と欧米の間-北京・ワシントン・モスクワ
第3章 外相就任と協和外交-対中国政策の理想と迷走
第4章 首相の一〇ヵ月半-陸軍との葛藤
第5章 「国民政府を対手とせず」-日中戦争初期の外相
第6章 帝国日本の瓦解-一重臣として
第7章 東京裁判-「積極的な追随者」の烙印
終章 訣別
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
2ndkt
29
著者は『落日燃ゆ』(城山三郎)で描かれている広田が、実像と異なると感じ「慎重に描き直した」。「広田はむしろ軍部に抵抗する姿勢が弱く、部下の掌握もできずにおり、そしてポピュリズムに流されがち」であったと指摘。城山小説にはなかった、部下の回想(広田への酷評)などは、説得力がある。/『落日燃ゆ』と本書を併せて読み、読者各々が広田の実像や外交指導者の在り方について思いを巡らすことが望ましい。なお、本書の初版刊行は2008年で、城山氏逝去の翌年。本書に対する城山氏のコメント、反論を聞けなかったことが惜しまれる。2015/02/04
Tomoichi
28
226事件以降の戦前史はなんか気が滅入るので避けてきたけど、いつまでも30年に読んだ城山三郎の小説「落日燃ゆ」のままの知識というのもという事で購入。なんだかよくわからない人というのが正直な感想で、幣原外交だって破綻したから広田が出世する道を開いたわけだし、歴史の流れが彼を歴史の舞台に押し出し、歴史が彼の人生を飲み込んだ感じがする。出世とは何か?という事を彼の人生から感じてしまう。2025/07/13
terve
27
A級戦犯において、絞首刑となった唯一の文官という人物についての本です。軍部に抵抗できず、ポピュリズムに流されがち。さらには大事な局面で熱意を失う。非常に人間らしい人物ではないでしょうか。対ソにおける考えは、やはり当時として唯一の存在でありましたが、マリクとの会合も不発に終わり、全てが裏目に出ている印象が、あります。本書のように実像を明らかにしていくものが増えていくと良いですね。2019/08/15
樋口佳之
24
皆さんのレビュー通りの本です。著者の著作3冊目ですが、この本も整理され、読みやすい内容だと感じました。/戦時期の叙述はやっぱり軍人中心になりがちな訳で、文官で唯一絞首刑となった悲劇の宰相というイメージしかなかった(小説は未読ですけど、ドラマの影響かな)廣田弘毅の像を得る事ができました。/夫人が自殺されてしまったことは読んでいて辛いものがありました。何らの責任もないだろうし、裁判の情状にも影響はなかっただろうに。2017/12/30
fseigojp
23
日本のアジア主義外交の源流を知るのに有益だった2015/09/19