内容説明
「重大事態発生」。官邸の総理大臣に、防衛省統幕議長がうわずった声で伝えた。Z国から東京に向かって誤射された核弾頭ミサイル5個。到着まで、あと43分! SFに初めて挑戦した松本清張の異色長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
金吾
37
約60年前に書かれたとは思えない臨場感がありました。特に人間の弱さについてはリアリティがあるように感じました。2023/07/20
sayan
36
Z国から核弾頭ミサイルが誤射され、東京都心半径12kmが全滅するまで残り43分、そんな設定はドラマ24を彷彿させる。初刊は1973年、つまり47年前の作品だから、核をめぐる「キューバ危機」のパロディかと思った。しかし全く様相が異なる。本書で描かれる人々の心理模様は、あまりにも今の緊急事態宣言下にいる社会に通じる。本書で直面する倫理・人権問題は今も同じように問われる。今朝(5月22日)のNHKでも取り上げた内容だ。松本清張の作品で「神々の乱心」等、タイトルに「神」が入る作品は独特の緊張感があり非常に面白い。2020/04/05
gtn
22
もうすぐ、首都圏の人類が滅亡する。それを知らされた時、人間は、あらゆる道徳的束縛を解き放ち、宗教も哲学も芸術も無に帰し、動物に戻ると著者は想像。私はそうなるという告白ともいえる。宗教の力を過小評価しているきらいがあるが、誰人も未体験なので、本小説どおりになるかも。なお、執筆当時の首相は池田勇人であり、錯乱する某首相は、彼をモチーフにしたと思われる。彼も不況下、切羽詰まったのかもしれないが「貧乏人は麦を食え」と発言した男。2024/05/25
rokoroko
21
東京に核が誤射されてパニックになる話。近未来SF。今この時にもありえそうな話。松本清張のSF。本当に起こったらどうなるかしら。私はどう行動するかな?多分食料品の地下貯蔵庫に逃げるかしら・・どうだろうか。ううん2023/01/30
Tui
21
松本清張、こんなのも書いてたのか。核ミサイルが飛来する43分前の東京が舞台のSFパニック小説、って筒井康隆の本かと思った(読んでる最中も)。社会が、理性が、抑制が、あっという間に瓦解する。人生の残り時間があと1時間もないと突然知ったら。しかもその理由が友好国から誤射された核ミサイルという、なんともやるせないものだったら。そんな喫緊の事態において、人はなにを思いどう行動するか。置かれた立場や環境による違い、そしていわゆる群衆心理など、パニック下を想定した清張版・思考実験の作品であります。2016/02/24