内容説明
ルネッサンスを生きたダンテ、ダ・ヴィンチら22人の生の軌跡を追求、滅亡に向かう文明の復活の秘密を探る。大胆なレトリックと苛烈な批判精神が横溢する名著!
目次
女の論理―ダンテ
鏡のなかの言葉―レオナルド
政談―マキャヴェリ
アンギアリの戦―レオナルドとマキャヴェリ
天体図―コペルニクス
歌―ジョット・ゴッホ・ゴーガン
架空の世界―コロンブス
終末観―ポー
球面三角―ポー
群論―ゴロア〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tonpie
40
戦時下コミュニストであった著者が、検閲と思想弾圧下で書いたエッセイ集。跋に曰く「戦争中、私は少々しゃれた仕事をしてみたいと思った。そこで、率直な良心派の中に交じって、たくみにレトリックを使いながら、この一連のエッセイを書いた。良心派は捕縛されたが、私は完全に無視された。(略)一度ソフォクレスについて尋問されたことがあったが、日本の警察官は、ギリシア悲劇については、たいして興味がないらしかった」高校生の時、たぶん澁澤龍彦のエッセイから見つけて読み、文章がカッコよすぎて、クラクラするほど衝撃を受けた。↓2024/03/18
しゅん
18
戦中に書かれたルネッサンスの批判的継承。ダンテ、マキャヴェリ、ポー、ソフォクレスなど、古代、近代の偉人一人一人にスポットを当てているが、特筆すべきはコペルニクス論だろう。闘争は逃避の一手段として退け、自らを抑制しつつ、対立を対立のまま調和させるという天文学者の態度は、軍国主義の中で生きた物書きにとっての指標として強い印象を残したのだろう。この姿勢は岡本太郎の対極主義にも近い。「ほんとうの素朴さは、知識の限界をきわめることによってうまれてくる」という言葉は、それ自体の素朴さとも合わせて銘記しておきたい。2017/10/20
NICK
11
あとがきにもあるように、これらの文章によって花田は逮捕されることはなかった。しかしルネッサンス期の人物を始め様々な時代の代表人を通してレトリカルすぎるまでに語ろうとしたのは、戦争や戦時体制という極度な単一的な物語化とでもいうべき体制への批判ではなかったろうか。花田はヘーゲル的な対立による弁証法の物語でなく、対立を対立そのものとして調和しようとした。コペルニクスの章で顕著なように、花田の方法はあたかも「戦っていない」ように見える。しかしコペルニクスがそうであったように、花田にとってそれこそが戦いだったのだ2015/04/30
れぽれろ
7
歴史上の作家・哲学者・科学者・宗教家・画家などの人物を軸に、様々な事象について自由自在に考察されたエッセイ。独特の文章は内容もさることながら文体が非常に魅力的です。タイトルは復興期となっていますが、考察はルネサンス期のみではなく多岐に及びます。レオナルドとマキャヴェッリ、ゴッホとゴーギャン、ルターとレオ10世、ウェーバーとブレンターノなど、相異なる人物を対比した考察がとりわけ印象的。そしてコペルニクスの静かな闘争は著者自身の戦時下での闘争を思わせます。各人物の著作を読みたくなる、読書の幅が広がる一冊。2015/02/21
ソングライン
5
ルネッサンス期を中心に、古代、近代も含む22人の思想を作者が解釈していきます。その人々は芸術家から科学者、国王まで多彩でその関連性は見出せません。その解釈に使われる例が古今東西の芸術、文学、科学から引用され、私の知識ではついていくことが難しい評論でした。2016/07/13