内容説明
宗教とは何か。その役割はどこにあるのだろうか。人は生あるかぎり「苦」を背負って歩む。物質的豊かさにもかかわらず、「退屈」と「不安」に苛まれる。手応えのない「空虚」な生に悩む。この現代的「苦」からの救済の道を、キリスト教、仏教、イスラム教という三大宗教はどのように指し示すのか。「信なき時代」における宗教の存在意義と課題を問い直す。(講談社学術文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
masabi
14
宗教は信じることを、哲学は疑い問うことを基礎に置く。とすれば、教義が現実にそぐわないことをもって宗教を批判することは無意味である。信徒にとってはまず第一に信じることが信仰になるからである。現実の悲惨さですら、死後の復活が救済となる。筆者にとっては神を信じない自由は認めるが、無心論者の存在はいいものではないようだ。宗教批判に対する批判において、批判者が批判する対象は宗教と思い込んでる別事象だとの記述があるが、宗教批判は宗教家のなかからも出るので妥当しないのではないか。2015/05/14
ふくろう
4
宗教は「信じる」ことから、哲学は「疑う」ことから始める。神と人間の関係についての説明はシンプルだが、主観だらけの説も混在しているので注意。2009/06/15
アブーカマル
2
宗教学を再考するためにも宗教の哲学。「哲学と宗教とは、非所有と所有、問うことと答えることの中に立っている」パウル・ティリヒ。ルターは罪を人間の「自己追求」と規定した。「人間とは異なる神の放棄」フォイエル・バッハ。神学は人間学へ。フィヒテによれば宗教の本質は、信ずるというところにあるのではなくて、自ら神を見、持ち、所有するところにあると言うのである。本書で無信の信という信仰が語られてるところが一番しびれた。先のルターにも通ずるものでもあるだろう。2017/04/07
Go Extreme
1
課題と方法: カント 哲学的課題 認識の限界 道徳法則 宗教的希望 人間とは何か 形而上学 経験の限界 仏教: ブッダ 四諦 八正道 無我 解脱 中道 苦行 輪廻 慈悲 瞑想 キリスト教: イエス・キリスト 復活 信仰と行為 隣人愛 救済 恵み 三位一体 神の愛 十字架 贖罪 イスラーム: ムハンマド コーラン 六信五行 スーフィズム アッラー ウンマ 啓示 礼拝 シャリーア 存在一性論 宗教批判: 無神論 宗教批判 絶対者 信仰 哲学的真理 ニヒリズム 救済の普遍性 倫理 科学との対話 フォイエルバッハ2025/03/28
素人
1
筆者はこの本で仏教・キリスト教・イスラームの哲学を検討し、それを元に一般的宗教といったものを構想する。筆者の構想する一般的宗教は、教義については仏教的な絶対無を、実践についてはキリスト教の神の愛(アガペー)を、それぞれ中心的な原理として持つ。また、絶対無と神の愛は三位一体説により媒介可能であるとされる。このことから、本書はキリスト教の土台の上に「東洋的」宗教思想を接木しようとしたものと評価できる。2018/09/25




