内容説明
「思い出した?」「なにを」「昨夜わたしにキスしたこと」ぼくは十七歳、北関東の街で、やたら生活力のあるお袋と暮らしている。けだるい夏休みのある日、つかみどころのない美少女・晶子に出会った。親友の田中くんと仲がいいのは気になるが、ぼくは晶子に惹かれてゆく。無茶なドライブをしたり、ビールをあおったり、大人の世界を覗き見したり…そんなゆるやかな日が、ずっと続くような気がしていたんだけど…。小さな街のリアルな青春を描き出した、傑作小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
S.Mori
8
素晴らしい青春小説でした。樋口さんはミステリ作家として活躍している方ですが、この小説の中にはミステリの要素はありません。60年代の地方の青春が瑞々しい筆致で描かれています。主人公のぼくが抱く社会に対する屈折した感情は、私も昔感じていました。女の子に対するナイーブな気持ちが微笑ましかったです。感傷を排した物語が結末でがらりと変わります。とめどなく涙を流すぼくが痛々しくて、この部分は胸に迫りました。詩的な題の「八月の舟」が気に入っています。この舟の中にぼくは、自分の青春も載せたのだと思います。2019/07/15
ピップ
8
青春小説。残念ながらイマイチ。主人公の研一君が合いませんでした。自分の行動を大人たちは寛大な心で受け止めているのに、研一君は少しでも嫌なことがあったらキレそう、というような心の狭さ、器の小ささを感じた。何を考えているのかもわからないし。正直なところ、この本で起こったいくつかの事件を、研一君が将来プラス変えることができる、と期待できないので、なんとなく悶々としてしまった。2017/10/17
ひで
6
高校生の少しノスタルジックな感じのする青春小説。恋愛や家庭の問題、悩み多き高校生の物語。親友との会話とか、淡々としていてそれがかえって小説全体の寂しさとか、ほんわかした雰囲気が出ていた。ちょっと淡白過ぎる感じもしましたけど・・・2015/08/29
koo
5
1960年代の前橋を舞台に高校生研一の夏休みを描いた青春小説。珍しく登場人物描写、価値観と時代が一致していました(笑)基本的な人物配置はいつも通りですが研一のセリフ回しは軽妙というより生意気で鼻がつきますし作風もどことなく暗く明るさ、軽妙さに欠けるので作者の持ち味は発揮されていませんが、人の死に向き合う主人公が前に進む青春小説として楽しみました。2025/12/15
なつみ
5
淡々とした描写の中にいくつか印象に残る文章がありました。うだるような夏の暑さがひしひしと伝わる一冊です。この作者の違う本も読んでみたいな..2014/03/15




