内容説明
直木賞受賞作。土佐藩の上士の娘・苗は、祖母・袖の嗜みであった一絃琴を5歳の時に初めて聴き、その深い音色に魅せられた。運命の師有伯と死別した後、結婚生活で一度は封印したものの、夫の理解を得て市橋塾を始め、隆盛を極めた。その弟子となった蘭子は苗との確執の果て、一絃琴の伝統を昭和に伝える(講談社文庫)。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
77
前半の苗を主人公をした語りは正直長くてつらいが、後半の蘭子との対立は緊迫感がある。それにしても幕末から明治・昭和にかけて「一弦琴」の音色に魅せられていく女性たちの情念はすさまじい。土佐が舞台なので、龍馬などにも想いをはせられる。 2010/05/23
じいじ
68
宮尾小説はまだ2冊目だが、情景描写に著者独自の個性と美しさを感じます。今作の「直木賞」受賞が結果的には著者の出世作となったようだが、執筆動機となった「一絃琴」の生演奏を聴いてから、18年もの歳月を費やして、推敲に推敲を重ねて書き上げた労作の方に、この小説の凄さを感じます。その内容も明治・大正・昭和の三代にわたる大作。五歳で聴いて一絃琴に生涯を捧げた茜と、戦後衰退しかけた一絃琴をみごとに復活させ、人間国宝になった蘭子。この二人の女性を軸に物語は綴られている。体制を整えて、三作目は『櫂』でいきたいと思います。2025/07/27
hit4papa
47
ご維新から昭和にかけて、高知を舞台に一弦琴を極めた女性二代の人生を描いた作品です。女性の自立が極めて難しい時代、そして地方都市にあって、幼い頃から芸事への情熱を昂らせる主人公のひとり苗。苗が人生の様々な逆境を乗り越え形成した流派で偉才を放つ弟子、もうひとりの主人公蘭子。情熱、嫉妬、執念が(しつこいくらいに)細やかな感情表現で語られます。時代とともに一弦琴は隆盛から衰退へと移り変わっていくわけですが、二人の女性に人生が合わせ鏡のように映し出されるという展開です。こりゃまたアツい芸道小説でした。【直木賞】2017/12/24
のびすけ
27
一絃琴に魅せられた二人の女性の生涯。明治期の土佐に一絃琴の隆盛を築いた苗の物語と、戦後衰退していた一絃琴を復興させ人間国宝になった蘭子の物語。一絃琴に懸けた情熱と執念、師弟関係の苗と蘭子の確執、女性としての苦悩と葛藤。静謐な筆致の中の濃密な人間ドラマにどっぷりと引き込まれた。宮尾登美子先生ご自身、蘭子のモデルになった方の演奏に接して深く感動したことがきっかけで書き始め、以来17年の歳月をかけてこの作品を完成させたとのこと。宮尾登美子先生、凄いです。感動しました。2024/10/09
ここぽぽ
21
琴に関わる女性の生涯が登場人物が変わり、四部構成で話が進む。 明治、大正、昭和と時が流れて、厳しい芸事の世界の価値観も変わる。琴への価値観の変遷が面白い。女性の心の内の機微が事細かに語られ、文体が読みにくく、なかなか進まなかった。琴への怨念、憧憬、嫉妬の心理描写と女性の思いが執念深い。ジットリ読了。2024/05/21
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