- ホーム
- > 電子書籍
- > 教養文庫・新書・選書
内容説明
音に託された意味の変化から中近世の日本社会を読む。中世において誓いの場や裁判の場で撞かれていた神聖な鐘は、次第に日常的な音になり、危険や時刻を知らせる役割を果たすようになった。神の世界と人間をつなぐ音から、人間同士をつなぐ音へ。その変遷を、史料に加え民俗学の成果も多分に用いて考察する。記録には残りにくい当時の人びとの感性や感覚を追うことで、中近世の社会・文化を描き出す。(講談社学術文庫)
目次
まえがき
はじめに
第一章 これまでの研究
西洋史の成果/日本史の成果/私の問題意識
第二章 誓いの鐘をめぐって
金打について/諏訪大社の宝鈴/御岳金桜神社の起請神文の鐘/小野神社の鐘/中世の誓いと鐘
第三章 他界から来た鐘
水中・龍宮から来た鐘/鐘淵・沈鐘伝説/実際に海中や水中から引き揚げられた鐘/地中から出た鐘/なぜ鐘が地中や水中と関係するのか
第四章 鐘の音の効果
鐘の起源と形/地獄に落ちた者を救う鐘の音/あの世とこの世を繋ぐ音/雨乞に用いられる鐘/龍頭と龍神/鐘の音に対する意識
第五章 無間の鐘
遠州の無間の鐘/『河内屋可正旧記』に見る無間の鐘/各地の無間の鐘伝説/歌舞伎・浄瑠璃と無間の鐘/無間の鐘伝説の成立について
第六章 音を出す器具と音の役割
鈴/鰐口/鉦/鉢/鼓/太鼓/笛/法螺貝/梓弓/琴/釜鳴り/音を出す道具の意味
第七章 神仏の出現と音
神仏の出現や往生の例/天狗や河童の出現と音
第八章 夜の世界
夜に対する意識/民俗事例から見た夜/夜は神々の支配する世界/夜と昼の交錯する黄昏時
第九章 鋳物師に対する意識
炭焼長者の話/鍛冶屋の姥/鍛冶屋や鋳物師の特性/鋳物師に対する意識の変化
第十章 神隠しと鉦や太鼓
妖怪の出現する時間と場所/神隠し/神隠しにあった人の探し方/鉦や太鼓で探すことの意味/徳政の鐘の音/入相の鐘
第十一章 軍器としての鐘や太鼓
戦争と鐘/陣太鼓/陣鐘/連絡用の鐘/軍器として徴発された鐘/鐘に対する意識の変化
第十二章 時の鐘
合図としての鐘の音/時刻を告げる鐘/時間観念の普及/時の鐘の普及/近世の生活の中の時間
第十三章 寺の増加と山のお寺
民衆への仏教の浸透/一向宗と日蓮宗/兵農分離と寺院/近世の民衆生活と寺院/山のお寺
第十四章 鋳物師の増加
梵鐘の増加/近世における各地の鋳物師の増加/全国的な鋳物師の動き/鋳物師増加の原因
第十五章 近世の危急を告げる音
近世における危急の音/声を立てる/貝と拍子木/鐘/太鼓/板木/共同体としての鐘下
第十六章 娯楽としての音楽
音楽の画期/中世までの音楽/戦国時代の音楽/娯楽としての近世の音楽/民衆の娯楽としての音楽
おわりに
あとがき
学術文庫版に寄せて
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
たけぞう