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内容説明
後世に残されたギリシア悲劇は、三三篇のみで、しかも、そのすべてが紀元前五世紀に創作・上演されたものである。宗教性、文芸性、社会性、いずれの面からしても、当時のポリス・アテナイの独自性と不可分のものであったこれらの演劇が、時代と場所を異にする場でも、人間を考えるための普遍性を維持しているのはなぜだろうか。本書は、代表的な一一篇の豊かな内容に分け入りながら、その魅力と奥深さを探る。
目次
序章 ギリシア悲劇とは何か
第1章 自由こそ-アイスキュロス『ペルシア人』
第2章 法の正義-アイスキュロス『オレステイア』三部作
第3章 人間讃歌-ソポクレス『アンティゴネ』
第4章 知による自立-ソポクレス『オイディプス王』
第5章 情念の奔流-エウリピデス『メデイア』
第6章 病める知-エウリピデス『ヘレネ』
第7章 懐疑、そして反乱-エウリピデス『キュクロプス』、『オレステス』、『バッコスの信女』
終章 精神史としてのギリシア悲劇
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サロメ
9
ギリシア悲劇は舞台で上演された演劇であるが、我々がそれを見る事は絶対に不可能である以上、文学として読み解いて楽しまなければならない。各作品が書かれた時代と当時のアテネを中心とするギリシアの社会状況を踏まえ、作者が作品に込めた思い(思想)を読み解き、悲劇作品の持つ文学的魅力を教えてくれる。「人間の深奥を見る」と副題を振っているが、哲学的な本ではない。単に戯曲としてさらっと読んだだけでは掴みきれないギリシアの精神文化を学べる良書だと思う。特にオレステイア3部作、オイディプス王の解説は秀逸だと思う。2013/04/07
みのくま
5
アイスキュロス、ソポクレス、エウリピデスの描いたギリシア悲劇をただ紹介するわけではなく、上演時のアテネの世相と大衆の無意識を反映させて作品を読み解く本書は、全くの傑作であると言って過言ではない。まさに文学と歴史の融合が本書で果たされているのだ。アテネ人がペルシア戦争で得た自信は、ペロポネソス戦争が進むにつれて失われていく。それはギリシア的価値観の崩壊を意味する。代表的なのは「知」や「法」についてだ。野蛮なものを線引きし、ギリシア的な「知」や「法」を称揚していたギリシア悲劇は、非理性的なものに蚕食されていく2023/08/03
ヴェルナーの日記
5
戯曲・詩の原点はギリシャから始まる。文芸批評を学ぶには格好の題材といえる。というよりもここから始めなければ、その後に続く戯曲・詩・小説の批評へと続くことができないので、一度は通らなければならない道である。本書は、「イーリアス」や「ホメロス」を基本に創作された11編の演劇から、当時のギリシャ(主にアテナイ)における社会性を浮き彫りにし、人間の本質と社会との関わりを突き詰めようとした意欲作である。2013/02/17
Saiid al-Halawi
4
個々の作品の、よく練られた構成に感心する。 ギリシア悲劇とは、今日の映画や少し昔の時事ものオペラなどのように、その内容に同時代性を多分に備えた市民向けメディアのような役割をも担っていたようだ。前5世紀当時にあって、作者の意図を余すことなく汲み取れていたアテナイの自由市民が一体どれほどいたことだろうか。2011/04/20
Hiro
2
前五世紀の古代アテネ百年のギリシア悲劇の歴史を三大詩人の主要作で振り返った力作。ちょっと力が入りすぎてくどくてしつこい所もあるがその熱意に打たれその説くところも充分に納得できる。例えばオレステイア三部作に見るギリシア人の法意識の進歩、オイディプスに見る神意に対峙して揺るがぬ人間の尊さ、バッコスの信女に見る古典ギリシアの知性の揺らぎ、等々、ギリシア悲劇を深く読み込んだ著者の洞察は非常に興味深く面白い。自身の知り感じたことを余す所なく伝えようとする著者のお陰で私のような初心者でも本書を読み通すことができた。2022/09/04
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