内容説明
元朝鮮総連幹部が“活動家家族”の一員として“帰国同胞”を訪ねてみたら、そこには思いもよらない硬直した社会が展開されていた。金日成・正日父子の指導下にある民衆がいかに心貧しく抑圧されているか、自己の体験をもとに民衆自身が万感の思いを込めて描く痛根の紀行。
目次
1 「祖国」への細い道
2 美しい風景、ふくらむ疑問
3 学習、学習、また学習
4 肉親への想いつのる
5 絶景・金剛山への切ない旅
6 期待と不安の家族訪問
7 主体の国よ、永遠にさらば!
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スウィーニー校長
8
★★★★☆ 朝鮮学校卒の元総連活動家が、 1982年に北朝鮮祖国訪問事業に参加した手記。 親族に会う為入国したのに、毎日繰り返される金体制・主体思想の礼賛教育に辟易。 当日に予定を知らされる、秘密主義。 入国3週間後にやっと親族に会えたが、監視員付き。 北朝鮮の庶民は皆、痩せてこけて、老けて、死んだ目。 帰国事業に乗ってしまったのは、 日本人が地上の楽園と宣伝した事が大きかった。 日本人なら嘘つかないだろうと・・・ メディアは、当時から腐敗していたのだろうな。2018/01/14
とりもり
5
何故こんなデタラメな国が、崩壊もせずに存続し得ているのだろう? それも、この本に記載されている時点(1982年)でも経済破綻は明らかなのに、それから30年以上も…、理解不能です。それはともかく、秘密のベールに包まれていた北朝鮮という国家の実態を赤裸々に活写したという点において、出版から時は経過したが、非常に価値の高い一冊。国家的たかり構造が末端にまで浸透している様は滑稽ですらある。北朝鮮の一日も早い崩壊を祈念して止まない。★★★★★2013/02/02
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3
帰国事業で親族が共和国に渡った在日朝鮮人金元祚氏が祖国訪問をした際の迫真の旅行記。著者の文章力に教養の深さを感じ取るとともに、同じ血をわけた姉や兄が共和国に帰国して没落していることの悲哀が際立つ。金元祚氏も帰国していたら、この知性が凍土の砂粒に消えてしまっただろうと思えば、帰国事業がもたらした損害に恐れおののく。共和国からすれば、帰国事業は、在日朝鮮人の係累を人質にとることで黙らせる・従わせる効果をも持ったのではないだろうか。作中にもその苦悩が描かれていた。2018/09/22
YUTAKA T
2
当時、何も知らなかったが、この本を読んで北朝鮮の悲劇を知った。あまりにも悲惨。経済の基本が崩壊して信じられないほどの貧しい生活を強いられている、一般庶民。そして貧しいうえに、言論の自由はカケラさえもない。日本から来た在日同胞を迎えるのにここまで警戒しなければいけないのか、と愕然とする思いになる。もしもこの本が韓国語に翻訳されて韓国で広まっていれば、主体思想派がここまで勢力を拡大できただろうか、と思う。’1985/06/22
ともぞう
1
1958年から始まった「地上の楽園」と宣伝された北朝鮮帰還事業。 20余年前に祖国北朝鮮に帰国した兄と姉、従兄弟に会うために約40日間帰国訪問した在日朝鮮人による日記。 この帰国訪問も40年くらい前のことですが、今もなにも変わっていないのではないかと思いました。 かなり重い内容ですが、北朝鮮の本当の姿が描かれています。 2023/03/23