内容説明
地球人類が星々に進出した時代。だが、それまでの連邦軍による植民惑星の統治が軋轢を生じさせるに及び、連邦経営機構は新たな制度を発足させた――それが司政官制度である。官僚ロボットSQ1を従えて、人類の理解を超えた植民星種族(ロボット、植物、角の生えたヒト型生命など)に単身挑む、若き司政官たちの群像。かつて『司政官』『長い暁』の2短編集に収録されていた全7作を作品内の年代順に編纂し、初の一巻本とした決定版。《司政官》シリーズは、大長編『消滅の光輪』『引き潮のとき』とともに、円熟期の眉村SFを代表する、遠大な本格宇宙未来史である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
GaGa
44
「司政官」を早川文庫で読んだのが十代の時、ある意味再読であるのかも知れないが、もう、一からやり直す形で(少し違うが・笑)全話読んだ。素晴らしい!「かれらの中の海」もそうだが、眉村氏の本格SF作品は現代で読んでも完全に通ずる。むしろ現代でこそのような気もしてきてしまう。「遥かなる真昼」「遺跡の風」は内容も覚えていたが今読んだ方が感銘が深かった。これぞ、大人のSF小説!これを全一冊で刊行した東京創元社に大いなる気概を感じる。未読の方で、大人でSF好きならば是非とも読むべし。2011/09/05
山口透析鉄
37
短編集「司政官」「長い暁」時代は学生時代にハヤカワ文庫の古書で読了していますが、kindle unlimitedにあったので、再読しました。 時系列に整理してありますので、制度ができた頃から衰退期への流れ、より把握しやすくはなっていました。 司政官、真っ当であろうとして、なかなか苦戦ばかり、です……。 個人的には短編での試行錯誤から2大長編「消滅の光輪」「引き潮のとき」が生まれたのでしょうから、故・眉村卓氏が本領を発揮したのは長編だったようには感じます。 非常に読み応えがあるシリーズです。2023/05/13
JACK
30
○ 24年に渡って描かれたSFシリーズの短編7編をまとめた作品集。人類が他の星系に進出し、植民惑星を作った時代。異なる生態系、文化を持つ原住者と、地球からの植民者を共栄させるため、地球連邦の連邦経営機構は圧倒的な権限を持つ〈司政官〉を派遣していた。沢山の官僚ロボットを従えて惑星を統治する専門家の彼らと、その星の原住者、植民者との関係を描く物語。植民惑星や原住者の描写が詳細で世界観に圧倒される。途中で飽きつつも、シリーズの大長編で数々の賞をとった「消滅の光輪」上下巻を読む準備としてなんとか読み終えました。2019/01/19
kokada_jnet
30
「眉村卓は、本人が主張するインサイダー文学論に匹敵する作品を書けなかった」というのが実際のところだと思う。眉村作品を国家公務員が読んで面白がるとは思えない。むしろ、小松左京のほうが、インサイダーが読んで面白い作品を書いていた。2017/08/21
kokada_jnet
25
一つの惑星社会全体を描くという、これだけの設定で、この程度の話にしかならないのかという、ガッカリ感が。ジャンルSFの限界と、眉村卓の作家的な限界と。司政官のマッチョイズムも、時代の制約だが、もう少し何とかならなかったものか。『消滅の光輪』『引き潮の時』という大長編では、「司政官の苦悩と自問自答ぶり」が芸として面白かったが。短編では「SFのアイディア・ストーリー性」が如実に出てしまっていて・・・。2013/03/18