内容説明
ベトナムの女子高生の「わたし」は、講演をするために訪れた東ベルリンで知り合った青年に、西ドイツ・ボーフムに連れ去られる。サイゴンに戻ろうと乗り込んだ列車でパリに着いてしまい、スクリーンの中で出会った女優に、「あなた」と話しかけるようになる――。様々な境界の上を皮膚感覚で辿る長編小説。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
118
この本は珍しく文庫になっているので、移動時間中にも読めました。やはり多和田さんの本というのはかなり面白い部分があるように感じます。ベトナムからベルリンへいき、それから西ドイツのボーフム、さらにはパリへと時間と空間の移動がうまく描かれています。私の好きなカトリーヌ・ドヌーブの映画が結構出てきます。日本語で書かれてその後ドイツ語、フランス語で出版されたそうです。やはりノーベル文学賞を早く受賞してもらいたい気がします。2019/06/18
sabosashi
21
1.遙かな昔には国民文学が云々されているときもあった。しかし文学には時間も国境も軽々と越してしまう能力がひそんでいる。ヴィエトナムの女子高生がピカレスク小説ばりに動き回る。いや、これは誤りか。振り回され、それでもしぶとく生きていくという器用さに注目すべき。器用さなんていえるものではなく、ときとして生きた心地はしていないとは思うが。女子高生がそんなシチュエーションにて軸にしているのが映画と女優。言葉のわからなさは二の次。かくいうわたしもメキシコにほっぽり出され、2026/04/13
六花
19
少しずつ読み進めていたら、時々迷子になってしまった。ベトナム、ドイツ、ロシア、フランス。映画の中、現実、虚構。語り口が淡々としていて、温度が低いのが好き。小説という形でしか表現し得ない世界。2016/03/13
ayumii
18
少女の妄想なのか、映画の場面なのか、現実に起きていることなのか、すぐにわからない部分が多くて読みづらかった。不法滞在者だということが、ここまで不自由で閉じた生活を強いられるものなのか。希望をつかみかけてもすぐに絶たれてしまう、そんなことの繰り返しが歯がゆい。2019/03/22
Bartleby
14
多和田作品は2/3くらいしか読んでいないが、彼女の小説のなかでもっとも好きな1冊。ベトナムからパリに来た少女とカトリーヌ・ドヌーヴがスクリーンを介して出会う。なぜ好きなのかはよくわからない。その言語化できなさがあるため再読してこれは何なのか確かめたくなる。パリという文脈の外にいる少女の視線が異化する、“社会主義ではない”世界。彼女はいつまで経ってもフランス語をおぼえない。2023/07/16
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