河出文庫<br> 弾左衛門とその時代

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河出文庫
弾左衛門とその時代

  • 著者名:塩見鮮一郎【著】
  • 価格 ¥792(本体¥720)
  • 河出書房新社(2013/10発売)
  • ポイント 7pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784309408873

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内容説明

弾左衛門制度は、江戸幕藩体制下、関八州の穢多身分を支配し、下級刑吏による治安維持、斃牛馬処理の運営を担った。明治維新を迎え、13代弾左衛門(弾内記=矢野直樹)は反差別の運動を起し、賎称廃止令によって被差別身分からは脱するが、同時に職業の特権的専制を失う。時代に翻弄されたその生涯を凝縮する。

目次

第1章 はじめに―弾左衛門とはなにか
第2章 弾左衛門という制度
第3章 弾直樹の生涯(小伝)
第4章 弾左衛門の謎
第5章 おわりに―中世へ
付録

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

AICHAN

43
図書館本。弾左衛門は世襲の人名であるとともに制度の名称でもある。江戸時代から明治初期にかけて、穢多・非人等の賎民を束ねた賎民であり制度だった。穢多や非人等は死んだ牛馬の処理や刑殺者の刑執行や処理、皮革産業、街中のゴミ拾い、大道芸などを生活の糧にしていた。その制度は明治になって廃止されたが、系譜は現代まで残り、その多くはいわゆる部落民として生きている。例えば牛の内臓処理を請け負う業者などは現代でも差別を受けている(『ドキュメント 屠場』)。その「弾左衛門」についてよく知りたくてこの本を借りた。日本の暗部。2020/02/22

イトノコ

36
徳川幕府が関東八州の穢多頭として置いた浅草弾左衛門とは、そして最後の弾左衛門となった弾直樹について解説。/一章は弾左衛門制度の概略。徳川幕府は武具の原材料として不可欠な動物の革の安定供給のために、鎌倉幕府に倣って制度を作ったと言う(鎖国により輸入は不可能)。二章は以前読んだ「最後の弾左衛門」とほぼ同じ。新政府が弾直樹に求めに応じて穢多身分の解放を行ったのは、倫理ではなく革製品の生産と販売の自由化という資本主義的な理由が大きかったようだ。時の政府の都合に翻弄され制度は消えたが、蔑視のみが残ったということか。2022/02/04

AN

25
テレビドラマで江戸末期から明治の事が取り上げられているので、久しぶりに再読、弾左衛門とは役職名であるとともに世襲される人の名前で、日本の身分制度の穢多の長の事。長吏頭とも呼ばれる。本書では江戸末期から明治にかけて弾左衛門の役職にあった弾直樹に焦点があてられている。仕置きや蝋燭の灯芯、革産業などに大きく関わってきた人々が、明治に身分制度が廃止になってどのような処遇になっていったかが説明される。教科書には決して出てこない身分制度の一端だが、江戸から明治にかけてどのような変化があったかを知るには良い一冊。2021/09/28

gtn

25
江戸幕府の身分制度の維持方法は巧だった。最下層に非人を置き、自らが被差別の対象である弾左衛門にその支配権を与える。納税を免除する代わりに権利も与えない。しかし、幕末、十三代目弾左衛門が現状打破に動く。幕長戦争への協力や莫大な献納と引き換えに、「身分引上」を幕府に働きかけ、一部悲願を実現する。その直後、幕府崩壊。解放令により全配下の身分引上を手に入れる一方、すべての権限を失う。制度上の整理だけ行い、差別を温存させる新政府のやり方は、旧政府より陰険である。2019/12/08

ハチアカデミー

20
「弾左衛門」は個人名であり、かつ14代続いた役職名。江戸時代の「士農工商」に組み込まれない人々の取りまとめ役である。請け負う仕事は、町の警備・牢番・処刑などから、ろうそくの芯作り、革製品の加工など。幕府とのつながりも強いため、処刑場の界隈で生活をすることが多く、13代の弾左衛門(矢野直樹)は、幕末を浅草界隈で向かえた。仕事と身分の結び付きから特権も得ていた一方で、幕末以降、仕事を奪われ、身分だけが残されることに危機感を覚え、「身分引上」を求めた。本書からは、時代の中の差別の構図が見えてくる。2015/02/27

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