内容説明
奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞くときぞ秋は悲しき――百人一首にも登場する伝説の歌人、猿丸大夫が詠んだ歌に秘められた謎。そして“いろは歌”に隠された1000年の暗号とは? 友人の不可解な死に遭遇した、後の民俗学の巨人・折口信夫の若き日の推理が、歴史の深い闇をあぶりだす。江戸川乱歩賞受賞の永遠の傑作! 1980年週刊文春ミステリーベスト10第1位。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんらんしゃ🎡
58
★井沢家とはお袋同志は友人で親しくさせて頂いているが、その子同士となると一度としてまみえたことなく私と元彦氏は近いようで遠い。★近いような遠いような存在、これはこの本の構成要素だ。猿丸太夫と柿本人麻呂の同一人物説。近づきながらも攻め切れない暗号。はるか万葉の世界が今に通じ、そしてまた近親者さえ…おっとこれ以上は言えない。★本作に限らず義経=ジンギスカン、光秀謀反の黒幕など歴史ミステリーはロマンがあり好きな分野だ。2018/10/16
へくとぱすかる
56
若き日の碩学・折口信夫を探偵役にして、柿本人麻呂の謎を追う。舞台は1909年だが、現代の大学院生が精神的タイムスリップによって、折口と同化することによってストーリーを構成している。ただし中盤からは、この学生は全く登場せず、ラストに申し訳のように現実に戻ってくる。もっぱら折口信夫の視点で物語は進んでいき、クライマックスを迎える。明治末期の人に暗号を解かせるために、著者が作った設定には、けっこう大変なものがあったにちがいない。江戸川乱歩でさえ15歳。『二銭銅貨』の発表まで、あと10年以上もあるのだから。2014/10/28
夜桜キハ
52
国語の先生により借りた文学ミステリー。やっと読み終えることが出来ました。百人一首の謎解きで、結構文学に詳しい方でないと100%楽しむことは出来ないかも知れませんが、流し読みでも面白く読むことは出来ました!いろは歌、そして人麻呂、猿丸太夫の謎。文学好きなら誰もが気になる謎を信夫が解いていきますが……そこには驚愕の真実と最後には切ないエンドロール。読了後何というか不思議な気持ちに襲われました。これを引き込まれる文体で書かれている作者に脱帽いたします。謎の解明が怖い。初めて読んだジャンルなので新鮮感があります。2023/07/11
ピッポ
46
【再読】新装版にて再読。何度読んでも面白く大好きな作品。猿丸太夫に係わる暗号を、万葉集、続日本紀などから紐解いていく過程がとにかく面白い。そしてついに解き明かされる内容には、真実と見紛う程の説得力を感じる。いわゆる歴史ミステリーには史実を探求するロマンがあり、無性に知識欲を掻き立てられるが、中でも本作は格別である。2017/04/12
みっぴー
45
1980年度乱歩賞受賞作品です。島田さんの『占星術~』をおさえての受賞。過去にタイムスリップして和歌に隠された暗号を解き明かすという歴史ミステリです。歴史は大好きなのですが、暗号解読の説明がくどくて、あまり自分には合わなかったみたいです。暗号からのメッセージも、割りとよくあるパターンで衝撃は薄かったです。ちょっと思い出したように後半になって殺人が起きるのも……。乱歩賞という枠を取り払って読んでいたら評価も変わったかもしれません(^^;2016/05/26