内容説明
自分の一生は、あの一週間のためにあったのかもしれない―。そんな一生のような”一瞬のきらめき”を透徹した目線で、切なく静かに描きとった中篇集。著者いわく「『世界の中心で愛をさけぶ』の原型がここにある」。「もしわたしが口を噤んでしまえば、わたしたちのあいだには何もなかったことになる。でもそれは確かに起こった。あの年の夏、わたしたちのあいだに起こったことを、きみにも知っておいてもらいたいんだ」余命いくばくもないママの病室に突如あらわれた見慣れない中年男性。彼は、ためらいながらも、やがてママとのことを話しはじめた。三十年かけて、その夏はようやく終わりを迎えようとしていた―。<実現しなかった思いほど、美しいものはない>。『世界の中心で、愛をさけぶ』で奏でられたそんな切ないまでの思いが、作者の内的音楽が、耳を澄ませばここでも聴こえてくる。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いずむ
30
生と死と。”静”と”止”と。先に逝った人たちの姿を思い浮かべながら、去来するのは哀悼でもなく、憐憫でもなく。生きていた彼らと向き合い、生きていくボクらと向き合うこと。悲しくないハズはない。それでも、心はすごく静かで、穏やかで。でもそれは、決して感動を忘れてしまったワケではなく。無感動と思えるほどに、ただ背景として、しかし確かに描かれている死。それこそがこの物語のチカラなのだと、ふと、そう思える瞬間。喪われてからしか見えない姿がある。喪われてからしか紡がれない絆がある。喪われてからしか守られない約束がある。2012/10/02
石井直樹
1
大崎善生、市川拓司、片山恭一の三人は僕の中では完全に立ち位置が被っている。 三人ともほろ苦い感じの恋愛小説っぽい作品が多い。 三人とも立て続けに著作が映画化されたから、その印象が強いのかも。 片山恭一の作品はミステリではないのに人がよく死ぬ。そういったところはよしもとばななや本多孝好に近いのか。この短篇集に収められた三篇も例外なく誰かしらが死んでいる。ちょっと安易な気がしないでもないけど、この作者の作品の雰囲気は好きだ。 2008/01/23
Ranko Taguchi
0
902011/05/18
omuu
0
短編集。母親の元彼に会いにいく…はw?。感情移入しにくかった。 これを機に短編集は読まない傾向に完全移行w
あろわな
0
病気や事故、特に人間の内面の感情をえぐってくる作品が多かった。当事者として、あるいは第三者として「死」と向き合う姿は心に強く残った。片山氏の文章は難しい哲学の言葉をより身近なものとして伝えている気がした。2010/01/11