内容説明
いじめで群馬に転校してきた女子高生のアオちんは、ナナコと親友になった。専業主婦の小夜子はベンチャー企業の女社長・葵にスカウトされ、ハウスクリーニングの仕事を始める。立場が違ってもわかりあえる、どこかにいける、と思っていたのに……結婚する女、しない女、子供を持つ女、持たない女、たったそれだけのことで、なぜ女どうし、わかりあえなくなるんだろう。女性の友情と亀裂、そしてその先を、切なくリアルに描く傑作長編。第132回直木賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
1104
2つの時間軸を並行して描くやや特殊な手法をとる。現在時の小夜子(彼女も過去を内包するが)と葵。そして高校生の葵とナナコ。うまいと思うのは、高校生の感性と限界とが巧みに描かれていることと、現在時(30代)の感性と互いの限界が描かれること。分かり合えるようでいても、互いはとうとう対岸にしか立ち得ない。すなわち、ナナコも両方の葵も小夜子も共に本質的には孤独だ。それが読者に、どうにもできないせつなさを喚起する。エンディングは作家の希求であるとともに優しさなのだろうが、もっと厳しい終わり方でも良かったのではないか。2017/12/26
zero1
819
大きな事件が起きなくても、「小さな宇宙」として小説は成り立つ。出発や出会いに遅すぎることなんてない。35歳の小夜子は出会いがない3歳の娘を持つ主婦。同じ大学を出た同じ歳の葵に雇われるが。葵は高校時代にナナコとの事件があった。両者の今と過去が交互に描かれる。「帰りたくない」の場面は角田の実力がよく出ていた。夫や姑にはイライラさせられるが、希望が残る作品。132回直木賞。解説は森絵都。過去を「単なるノスタルジーとして語られているのではなく、今現在の葵が足を踏みだしつづける源泉として描かれている」と評価。2019/04/03
ミカママ
641
初読では気づかなかった(もしくはわたしが成長した分気づきが増えたか)作品中のさまざまな箇所がとても沁みた。おそらく男性読者にとっては鬱陶しいだけの内容なんだろうけれど。人は人と知り合い、心に小さな刻印を押していく。そしてその刻印の押され方、もしくは人との向き合い方は、歳を重ねるごとに変わっていくように感じる。この作品で角田さんは直木賞を受賞されたそうだが、納得の出来ばえ。映像化作品も観てみたい。2023/02/22
さてさて
630
人はなぜ前に進むのか。それでも前に進むのか。普段このようなことを深く考えることはないと思います。でも生きていると人には迷いが生じます。前に進めなくなる、進みたくなくなる時だってあります。でも私たちは一人じゃありません。人として生きている限り、出会いはいろんなところで待っています。出会いと別れを繰り返して前に進んでいく私たち。書名の絶妙さに驚くその結末。生きていくことの希望が見えるその結末。そしてそっと静かに背中を押してくれるような優しいその結末に、あたたかい感情がふっと余韻として残るそんな作品でした。 2021/02/05
エドワード
530
楢橋葵は一人で事業を経営する35歳の女社長。しかし彼女にも心細い高校生時代があった。小説は過去の葵と、小夜子というもうひとりの心細い主婦から見た葵を交互に描くことで、現在の女性たちの生き様を描き出していく。人は、過去の自分と必ずつながっている。そして過去の友人と。誰でも過去の友人と過ごした時間が二度と戻らない時間であることを知っている。終幕で、川の対岸にいた高校生の葵が小夜子に手を振り、小夜子が駆けよっていく情景がこの上なく美しかった。2011/07/15
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