内容説明
豊富な体験をふまえた通訳論。通訳者の社会・文化史的意義を本格的に研究した、初めての書。経験・知見にもとづく深い洞察が冴える。同時通訳パイオニア――西山千、相馬雪香、村松増美、國弘正雄、小松達也、各氏へのロング・インタビューを収録。外交の内幕や、通訳の仕事をめぐる驚くべきエピソードに満ちた、手応えの大きいオーラル・ヒストリーとなっている。「通訳とは何か」「通訳者の役割とは何か」――現役の通訳者、通訳を志す人、そして、通訳・翻訳の世界を深く知りたい人びとに贈る、本格的通訳研究。また、希有なドキュメントが、日米関係の裏面史を明かしており、国際問題への関心に応える貴重な一冊である。
目次
第1章 はじめに
第2章 これまでの通訳と翻訳に関する研究
第3章 日本における通訳と翻訳
第4章 通訳者の「ハビトゥス」
第5章 通訳という「フィールド」へ
第6章 「実践」としての通訳
第7章 考察―通訳の役割をめぐって
終章 今後の課題
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
テキィ
7
「自分を殺す」という点で通訳者とデザイナーは似ている。殺しても仄かに個性が匂い立つところも。2012/05/03
hayatama
3
鳥飼先生の大著。前から欲しいな、とは思っていたものの、あまりな値段にたじろいでいたところ、ある先生から日本人通訳者のパイオニアのナマの声が読める本として推薦され、購入。そもそもは鳥飼先生の博士論文がベースであり、通訳翻訳学に関する記述が多く、興味のない人には面白くないかもしれない。(あたしは通訳者の役割に関する理論など非常に面白く読んだ。)それ以上にやはりパイオニア5人の話は本当に面白い。通訳者を目指すヒトは一度読んでも損はない。2014/01/18
Masayuki Shimura
0
[黒衣、前へ]著者が2006年に提出した博士論文が基になっていることもあり、通訳についての理論的知識や情報がない方(私もそうだったんですが...)には難しく思える部分もあります。他方で、オーラル・ヒストリーの取材対象となった五名の話がとにかく面白い。戦前から戦後間もない頃という、英語学習にとっては難しい時期に、好奇心と情熱で英語に向き合った記録は感動的ですらあります。2014/12/29