内容説明
中学生の翔太と猫のインサイトが、「いまが夢じゃないって証拠は?」「心があるって、どういうこと?」「たくさんの人がいる中で、自分だけが『ぼく』なのはなぜ?」といった問いをめぐり対話する。「私」が存在することの奇跡性や可能世界、正義原理、言語ゲームなどの諸問題を取り上げる予備知識のいらない哲学入門。
目次
第1章 いまが夢じゃないって証拠はあるか(ぼくらは培養器の中の脳か ほんとうであるとは? 見える世界とほんとうの世界 デカルトのはなし)
第2章 たくさんの人間の中に自分という特別なものがいるとはどういうことか(他人には心がない? 心があるとは? ぼくは存在する! カントのはなし)
第3章 さまざまな可能性の中でこれが正しいといえる根拠はあるか(善悪の客観的な基準はあるか 住んでる世界が違う? 意味は存在しない ウィトゲンシュタインのはなし)
第4章 自分がいまここに存在していることに意味はあるか(人間には自由意志があるか 宇宙の果ては―「いま」の神秘? 死―人生の意味 ハイデガーのはなし)
第5章 死と夢
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
46
再読するたびに発見があります。2章は確かウィトゲンシュタインだったかな?と読み進めたらカントでした。培養器の自分を重ねて「超越論的」を説明するのは見事です。超越論的に世界を説明したのがカントで、内側から説明したのがウィトゲンシュタインですが、ウィトゲンシュタインは3章に出てきます。ところが、3章の価値の無根拠さの議論は、ニーチェが混じってきます。勝利したことにより前提とされた善悪の価値を暴くニーチェと、言葉の使用の前提とされた価値を暴くウィトゲンシュタインを並べて議論していることに今回初めて気付きました。2019/12/02
penguin-blue
36
「今自分に見えている世界は本当なのか」「大前提だと思われていることは本当に真実なのか」→まず疑ってかかって、あーでもない、こーでもない、と考えることから人間は進化してきた。言い換えれば、ほとんどの人が「当たり前」「考えても仕方ない」と思ってたことを疑ってみて、違う方面から考えてみようとした人がいたから哲学→科学、文学といろいろふくらんできたわけで、そのとっかかりの「存在を疑ってみるという事」を平易?に描いた本。いやいや、読んで「何だめんどくせー」とか思う輩は所詮哲学などわからないのだよ…私もだけど(苦笑)2018/04/18
踊る猫
35
あくまで「あなたの感想ですよね?」な戯れ言を書くが、私はよい本とは結局のところこちらを気持ちよく和ませる本とは限らないと思っている。そういう良書もありうる。だが、こちらに迫り、こちらの常識という枠組みを壊しただちに再構築させ、私自身をして生まれ変わったような気にさせる。そんな本もあっていいのではないだろうか。そして永井均のこの本はまぎれもなくそうした「再生」を味わわせてくれる得難い1冊だと唸った。ナメてはいけない、真に「問い抜くこと」「考え抜くこと」「生き抜くこと」の大事さを教えてくれるファンタジー作品だ2023/01/22
SOHSA
23
《Kindle購入本》約2年振りの再読。何度読んでも新しい発見がある。また、原点に立ち戻る。すぺてのスタートはここなのだ。ここからは何度でもやり直せる。哲学とは終わりのない旅だ。不毛の旅に出る意義などはない。気づいた時には既に旅に出ているのだ。これからも終わりのない旅は続くだろう。本書はその旅のかけがえのない相棒なのだ。2014/12/23
しらぞう
21
自分にとって特別である自分の人生を生きるのは自分以外にありえない。人生全体の意味というものは有り得ず「いまここ」を生きていく。答えのないことに対して、自分で考えて自分だけの答えを出していく、哲学はその考えるベースになる。答えをどこかで仕入れ、機械的に実行するのではなく、ひとつひとつ自分にとっての意味を考えることにより、自分だけの知恵となる…2回読んだが、何せ難しい。ありきたりなまとめに落ち着いたが、考えた末に一般的な結論に到達するのも、また哲学とのこと。インサイトがそう言っていた。 図書館本なので要購入。2020/01/22