内容説明
行きがけに手紙をポストに投函しようと思っていたのに,すっかり忘れていた──こんな経験は誰にでもあるだろう.なぜ人はそのような失敗をするのか.裏を返せば,どうして「しようと思っていたこと」を「タイミングよく」思い出せるのか.日常的な記憶経験を出発点に,心理学と脳科学の成果から,そのメカニズムを探る.
目次
目 次
はじめに
1 いろいろなうっかりミス
し忘れ──「あっ、忘れてた!」
し間違い──「あっ、しまった!」
大事故につながることもある「し間違い」
ど忘れ──「知っているはずなのに思い出せない!」
2 「し忘れ」とは何か
展望記憶
人間関係にとって大切な記憶
意図の存在が生む緊張
肝心なのは思い出すタイミング
年をとっても衰えない記憶
スキル化された記憶
3 「し忘れ」を実験的に再現する
失敗の分析の難しさ
並列型課題
年齢差が見られなかった理由
人工的な課題で記憶の失敗を再現できているのか
物語置換課題
並列型課題のさらなる難点
存在想起と内容想起
ミニデー課題──存在想起と内容想起を区別する
時刻に対する敏感さ
子どもの発達と展望記憶
4 「し忘れ」を生み出す脳
認知神経科学によるアプローチ
記憶の障害──健忘症と認知症
健康な「し忘れ」と病的な「し忘れ」
内容想起の脳内メカニズム
存在想起の脳内メカニズム
存在想起と検索モード
意識する前に違いに気づく脳
記憶障害に対するリハビリテーション
失われた展望記憶能力は回復するか
5 「し忘れ」を防ぐ
自らを知る──セルフモニタリングの重要性
実行の時刻を特定する
意図として認識する
環境を整備する
おわりに──「想起の瞬間」を求めて