内容説明
薔薇戦争の末期、世の中に平穏が訪れようとした頃、醜悪な容姿と不自由な身体を持つグロスター公リチャードは、王となることで全ての人々を嘲笑し返そうと屈折した野心を燃やしていた。やがて彼は兄王エドワード四世の病死を契機に、暴虐の限りを尽くして王位を奪う。しかし、明晰な頭脳を誇ったはずの彼にも思わぬ誤算があった――。シェイクスピア初期の傑作を、原文のリズムにこだわった名訳でおくる決定版。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
49
リチャードの王になる執念が凄いです。自らの体のハンデxを笑う人々を嘲笑し返そうとして王位を狙います。兄の死をきっかけに王位を奪う姿は暴君にも思えました。ただ、頭脳明晰のはずのリチャードにも誤算があるというのが笑えます。シェイクスピア初期の傑作ですね。2023/05/15
masabi
18
【要旨】リチャードが謀略の限りを尽くして王位を簒奪し破滅するまでを描く。【感想】 「ヘンリー6世」の続編だがまだ読んでいないのでそちらも読みたい。リチャードは身内も忠臣も容赦なく死に追い込む冷徹な人物である一方で彼を憎む女性を口説き落としたときには鏡や仕立屋を用意しようかと浮き足立つ面もあり単なる冷血漢でなく思える。演劇だけあって因縁ある相手を口説いたり仲介を頼んだりする台詞の応酬が心地好い。野心家の栄華と破滅は読んでいて楽しい。 2017/08/26
Takashi Takeuchi
9
河合 祥一郎訳は評判通り程々に現代的で会話のリズムとテンポが良くとても読み易い。本文の下に詳しい注釈が並ぶのも親切。唯、この時代の背景に疎いため本文と注釈を行き来してたらストーリーを見失いかけた。もう少し勉強してもう一度読み直そうかな。登場から破滅まで徹頭徹尾、冷酷無比な「悪」リチャード三世。その悪の源泉は容姿のコンプレックス、他者を支配し自分を認めさせたいという思い。そこに滑稽さと悲しさも感じられるからか、多くの名優たちがこの役を演じたがるのもよく分かる。2018/05/20
郵便屋
8
『時の娘』を再読する前に読了。自分が王になるため、自らの兄や幼い甥を次々と手にかけていく極悪非道さはダークヒーローとして逆に魅力的だ。その根源は自らの醜い容姿による劣等感から生じたものだという弱さと、「悪役になる」と自分で宣言して実行に移す強さ、この対立する属性に惹きつけられる。2018/01/30
おくりゆう
8
歴史ミステリ「時の娘」から興味を持ちましたが、リチャード三世の突き抜けた悪っぷりがいっそのこと面白い、とさえ感じる作品。注釈に気を取られるもののリズムよく読むことが出来ました。2013/08/29