内容説明
東京・杉並区の善福寺公園で、崖から落ちそうな少年を助けた中年の男は、その朝発生した金融業者殺しの犯人なのか? 夫の出張中、愛する男と密会の帰途、偶然二人を目撃した桂木麻子は、その後、少年の身が狙われていることを知るが、名乗り出ることもできない。思い余った末、匿名の投書を警察に送ったことから、麻子は新たな殺人事件の罠に……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヨーコ・オクダ
25
不貞の逢引からの帰り、婦人は崖から落ちそうな少年を中年男性が助けるところを目撃。どうやら彼は、その近くで起こった強盗殺人に関わりのある人物らしく、少年&婦人は後からジリジリと魔の手に追い詰められていく。特に婦人の方は、オープンにできない事情があるため警察に頼ることもできず、また家庭内では夫が不貞に気づいているのでは?という不安もあり、心理的圧迫感がハンパない。まぁ、強盗殺人と不倫の件をクロスさせるための設定が甘い部分もいくつかあるんやけど、あのサブタイトルの方向へ着地させる夏樹センセの筆力はお見事!2020/01/11
coco夏ko10角
20
殺人事件の犯人かもしれない人と関わった少年、不倫相手と過ごした帰りにそれを目撃した麻子、警察は目撃者を探すが…。殺人事件の犯人は?だけでなく、不倫相手がよりによって…なこともからんでいったり犯人の罠もあったりでハラハラ。麻子がどんどんと精神的にまいっていく心理描写がうまい。2021/08/15
Yuki
2
『量刑』『Wの悲劇』でちょっとファンだった夏樹さん。土壌汚染による農作物被害の問題、不倫関係の男女、殺人事件…。全てがうまくかみ合って、ちょっと長かったけど楽しめた。二つの棺ってヤバくない?これって今もできちゃうのか?和栗警部補のじっくり真相に迫っていく姿勢に心つかまれた。2017/06/30
じいじ
1
★★☆ 迫力感、緊張感は薄いが、一気に読める面白さはある。 この著者でのおすすめは『第三の女』『東京駅で消えた』。2014/03/23
Stevie G
0
この昭和50年の長編推理小説は、主人公がどんどん変わっていく面白い構成でした。高利貸しの老人、愛人のホステス、そのヒモ、資金ショートした不動産会社社長、化学会社の総務部次長、放って置かれている妻、偶然再会する幼馴染の助教授、出て行った父親の影を追う純真な剣道少年、地道に犯人を追いつめる所轄の刑事、機転の利く新聞記者。犯行の動機や登場人物の心理の動きというのは、東野圭吾の時代になってもほとんど変わっていませんね。舞台が近所なので面白く読めました。不倫カップルが肯定的に書かれているのが弱い所ですかね。2012/06/13