内容説明
仏法末世が信じられた鎌倉初期、念仏だけを称えれば救われると説いた法然。従来の仏教的価値観を根本的に覆した思想の真髄を、平易な訳と原文で紹介。強靭な求道精神の魅力に迫る浄土宗・浄土真宗の基礎文献。
目次
標章 道綽禅師が、仏教を「聖道」と「浄土」に分け、「聖道」を捨てて「浄土」に帰せよ、と説く文。
引文第一 道綽禅師の『安楽集』上には…
私釈 宗派の根拠／「浄土宗」の立場／さまざまな分類／「浄土宗」の師資相承
標章 善導和尚が浄土往生のための行を「正」・「雑」の二つに分けて、「雑」行を捨てて「正」行に帰依するように勧めている文。
引文第一 善導はその著『観経疏』の第四において…
私釈 正・雑二行の得失
引文第二 善導の『往生礼讃』は…
私釈
標章 阿弥陀如来は称名以外の行をもって往生の本願となしたまわず。ただ念仏をもって往生の本願となしたまえる、という文。
引文第一 『無量寿経』の上に…〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nbhd
23
学生の立場ならレジュメがつくりやすいだろうと思うくらい法然さんの話の進め方はシンプルだ。「ＡかＢか」という選択肢からはＢを選ぼう、次に立ちあがる「ＣかＤかＥか」の選択肢からはＣを選ぼう、次の選択肢「ＦかＧか」だったらＦを…といった具合に、樹形図が書きやすい構成になっている。補足説明も①②③と丁寧に整えてあって「智慧第一の法然」と呼ばれたのも納得できる。ただし「Ｂを選択する理由」については明記されてなくて、どこそこにそう書いてあったから、とあるだけ。ここらへんに法然さんの宗教的飛躍があるのかなと思った。2016/07/14
かんちゃん
15
Kindle版にて。通勤の合間にスマホでチマチマ読んでいたが、最後は一気に読み切った。浄土思想についてはこれまでの読書である程度解っていたので、比較的すんなりと理解できた。なぜ聖道門ではなく、浄土門なのか。法然は自らは浄土門を選びながらも、聖道門に入る者を否定しない。釈迦思想に依拠するしないの正統性論議は別にして、これが、日本でのみ広く受け入れられた背景の一つだろう。2015/01/02
moonanddai
8
「偏執」なまでに「念仏」のみにこだわる姿勢。これは「末法」という時代背景の中ということを考えなければ いけないのですね。（私の理解としては）釈迦の教えそしてそこからでる経典等自体を否定するものではなく、「末法」だから他の諸行ではなく「念仏」だけが極楽往生への道に通じざるを得ない状況にあるのです、ということなのでしょう…。それにしても阿弥陀如来はブッタの先輩になるのですね。その他初めて知ることが多かったです。2018/04/19
壱萬弐仟縁
6
絶望の鎌倉初期。末法思想（裏表紙）。仏教価値が下落の没落史観（30ページ）。1198年（13ページ）。選択は浄土宗だとセンチャク、真宗だとセンジャク（17ページ）。念仏が最高で最終手段（18ページ）。他の人、世間のために善を行おうとする菩薩の実践（26ページ）。三悪趣の地獄・餓鬼・畜生（47ページ）。現世の悪行をお天道様が見てるぞ、ということか。十全のうち嘘をつかず と 言葉を飾らない と 二枚舌を使わない は東大話法の一環だから、霞ヶ関の官僚は国民奉仕（修行）が足りないのでは。専修念仏（261ページ）。2012/12/31
失速男
5
自分は凡夫であることを自覚せよ、凡夫は修行などする暇無いし、出家して修行したところで到底解脱などできないことを知れ、それでも念仏を唱えれば救われる。その理由が述べられているわけだが、前提としているのが浄土三部経で、そもそもその記述が信じられなければ全く意味をなさない。それでも法然が、一人でも多くの人の心を救おうとしていたのは事実であろう。2017/03/21
