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内容説明
万葉人たちが生きた七世紀半ばから八世紀にかけては、都市生活者が現れ、個の自覚や孤独が意識され始めた時代だった。恋の歌から挽歌まで、万葉集の歌の〈われ〉を検証し、歌とは何かを解き明かしていく。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はちめ
6
万葉集の時代を共同体の中に埋もれていたわれ、つまり自我が自立を始めた時代だという考えにより書かれている。共同体に埋もれた自我という問題は分かりにくいようで、実は現代を生きる日本人にも切実な問題として残っている。自身の考えというものを他者に寄りかかる形でしか持ち得ない日本人は案外多い。大伴家持が最終的にたどり着いた孤独の中のわれを感じ得る日本人は多くはないのではないだろうか。 読んで面白い名著。☆☆☆☆☆2020/04/21
はちめ
4
万葉集研究に関する3代の蓄積を感じる。興味深い指摘がたくさんあるが1つだけ紹介。万葉集には遊行女婦(うかれめ)による短歌があるが、遊行女婦の短歌には「われ」が使われていないという。これは、例えばクラブのホステスは自分の話をするのではなくお客さんの興味がありそうな話題でその場を盛り上げようとするのに似ている。スナックの経験の浅いホステスは自分の自慢話で会話を作ろうとする。遊行女婦は采女が何らかの理由で遊行女婦になったりしていたらしいので、教養も十分持ち合わせていたのだろう。☆☆☆☆☆2022/08/09