内容説明
越後の上杉、甲斐の武田、小田原の北条。関東管領が実質的な力をなくし、覇を争う武将たちに取り巻かれながらも、上野の沼田万鬼斎はしたたかに生き抜こうとしていた。しかし愛妾・ゆのみとその父・金子新左衛門に翻弄され、一族は過酷な歴史の渦に飲み込まれていく。小国の衰亡に光を当てた凄絶な戦国雄編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とん大西
127
諸行無常、非情です。戦略上の要衝地、上州沼田。土豪沼田氏の哀愁漂う太平記。沼田城が真田家の一拠点として歴史上のスポットがあたる前の話。ひとときの団欒も、青い快楽も、勇ましい刃の交わりも…その後に待っているのは容赦なく渇いた死。親子だろうが兄弟だろうがおかまいなし。権謀術数渦巻く戦の世、そこに英雄はいない。興亡の狭間に埋もれていく万鬼斎の威厳、ゆのみの美貌、弥七郎の清廉。彼らのあさましい欲望と悲哀が行間にうかびあがる。お見事、池波先生。淡々とした筆致で余計に臨場感が増してきて…いやぁ、名作です(^^)2021/04/25
シュラフ
18
ずっと以前に鬼平シリーズを読破して池波正太郎はもういいやと思っていたのだが、この小説はなかなか面白かった。舞台は戦国時代の沼田城をめぐるおどろおどろしい話。世の中で一番 恐ろしいのは、人の邪悪な心である。そういう意味で、金子新左衛門の邪悪な心持ちが恐ろしすぎるし不気味である。鬼平シリーズでもそうだが、池波正太郎という作家は邪悪というものを真正面から描いている。そして結末はたんなる勧善懲悪というわけではない。この作品の結末も、ただただ救いようがない。2014/07/02
HIRO1970
10
☆★☆上州沼田を題材にした本作。名胡桃城の鈴木主水や真田昌幸も出てくるので真田太平記の番外編という感じでもあり、非常に楽しめた作品でした。流石は正ちゃん。2013/05/16
ことぶき2011
4
もともと仕事絡みで読み始めた戦国時代モノ。・・・ダメだ、ハマってきている(笑)。この作品がどれだけの評価を受けていて、池波作品の中ではどうなのかとか全然わからないのだけど、戦国時代に夢中になりかけているので、はっきり言って何を読んでも面白い(笑)。2013/02/05
はせこー
4
沼田城ってこんな歴史があったんや。 個人的に好きな話だった。 人間の欲望が垣間見えるのがいい!2012/10/23